自動車の盗難を防止するには、罰則やセキュリティ対策を強化するよりも、盗んだ車の価値が下がる仕掛けの方がはるかに効果がある――ケムニッツ大学のスヴェン・トゥーフシェーラー博士(心理学)は、さきに発表した博士論文の中で、このような結論を導き出した。自動車窃盗の最大の目的は金銭的な利益にあるため、車やドライバーを傷つける行為を避ける傾向が強いという。
\トゥーフシェーラー博士は、自動車を盗む側・盗まれる側の心理的な側面を探るため、服役中の自動車窃盗犯と高級車の所有者を対象に聞き取り調査を実施した。さらにドイツ人ドライバー2,000人以上を対象に実施したネットアンケート調査の結果を合わせ、自動車のセキュリティシステムや保険、自動車犯罪に対する恐怖、盗難による損害などの関連性を調べた。
\高級車のオーナーが最も恐れていることは盗難の標的にされることだった。この心理を反映して、イモビライザーやオートアラーム、監視カメラ、自動通報などの盗難防止システムを装備する希望が強かった。経済的な損害に対する心配は比較的少なかった。
\一方、自動車を窃盗する側は、警察官の動員や罰則強化はほとんど抑止力にならないとみている。また、防犯カメラやGPS追跡システムといった盗難防止システムも「わずらわしい」機器であるが、盗難防止にはほとんど役に立たないとしている。一方、盗んだ車に傷をつけて価値が下がることや、逮捕された場合に刑罰が重くなる暴力行為は極力避けるようにしているという。車オーナーのと窃盗犯の意識に大きな食い違いがあることが分かった。
\トゥーフシェーラー博士は「一例として、真夏には冷房が作動せず、シートヒーターが最大に熱くなる仕掛けや、真冬には窓が全開し暖房が作動しない仕掛けをしておけば、これらを解除する労力と捕まるリスクを考えるとペイしなくなり、盗難は減る」とコメントしている。
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