ユーロ圏16カ国は25日、ブリュッセルで臨時首脳会議を開き、財政危機に陥っているギリシャへの支援策で合意した。ユーロ圏各国と国際通貨基金(IMF)が協調融資するという内容。実施時期は決めず、ギリシャが資金調達できなくなったときに「最後の手段」として実施する。当初想定していなかったIMFによる支援が組み込まれたものの、難航していた支援の枠組みが決まり、ギリシャに対するセーフティーネットが確立されたことで、ギリシャの財政危機問題はヤマ場を越えた格好となる。
\ギリシャ支援策は26日に閉幕したEU首脳会議で承認された。合意によると、ギリシャ支援はユーロ圏各国による2国間融資と、IMF融資を組み合わせた形。ギリシャが市場で資金を調達できなくなった場合に、ギリシャの要請に応じて実施する。支援規模は不明だが、ギリシャが200億ユーロを超える国債の償還期限を迎える4、5月に金融市場で資金を調達できない場合を想定しており、欧州委員会筋によると200~220億ユーロ規模となる見通し。仏サルコジ大統領によると支援の3分の2をユーロ圏、3分の1をIMFが担う見通しという。各国の負担額は任意で決めることができるが、共同声明では欧州中央銀行(ECB)への拠出割合が基準になるとしている。
\2009年の財政赤字が国内総生産(GDP)比12.7%まで膨らみ、信用不安が広がって国債発行による資金調達がままならないギリシャへの支援をめぐっては、当初はEU単独での支援を模索していた。1999年にユーロが導入されてからこれまでユーロ参加国がIMFの支援を受けたことはなく、ここでIMFに頼ると通貨同盟の威信が失墜し、EUが主導するはずのギリシャの財政再建にIMFが介入してくることも警戒したためだ。ユーロ圏が16日の財務相会合で支援の枠組みで合意した際も、IMFによる支援は組み込まれていなかった。
\ところが、ユーロ圏最大の経済国でギリシャ支援でも中核を担うことになるドイツが、世論の反発を背景にユーロ圏単独での支援に慎重な動きを強めたことから、事態が急変。25日開幕のEU首脳会議に先立ってユーロ圏首脳会議が急きょ開催されたのも、事前の協議で方向性を固めておかないとEU首脳会議で支援策が見送られ、ギリシャ危機が深刻化しかねないと判断されたためだ。
\ \支援実施に厳しい条件
\ \支援実施の条件としてIMFも加わることを求めた独メルケル首相は、ユーロ圏首脳会議に先立って、IMF支援に反対する仏サルコジ大統領を説得して支持を取り付けることに成功。ユーロ圏首脳会議では独仏の主導で今回の支援策が固まった。首脳会議では支援実施に厳しい条件が必要とするドイツの主張に応じて、ギリシャから支援要請があれば欧州委員会とECBが妥当性を判断し、すべてのユーロ参加国が承認しないと実施しないという条件をつけた。また、単なる救済とならないよう、融資の金利を高めに設定することも打ち出した。さらに、ギリシャのような財政危機の再発を防ぐため、EUの財政規律を強化することでも合意。作業部会を設置し、年内に規律違反への罰則強化を含む具体策をまとめるようファンロンパイEU大統領に要請することを決めた。
\今回の合意をパパンドレウ首相は「欧州は大きな試練の中で大きな一歩を踏み出した。大いに満足できる決定だ」と歓迎の意を表明。ファンロンパイ大統領は「実際に支援が発動されないことを期待する」としながらも、「ギリシャ国債の保有者は、ユーロ圏がギリシャを見捨てないことをわかってもらえたはずだ」と述べ、セーフティーネット整備の意義を強調した。また、ルクセンブルクのユンケル首相兼財務相は「投機筋は我々がこのような(支援の)手段を持ったことを知って、失望するだろう」と述べ、国債市場の混乱が収まるとの見方を示した。
\26日の債券市場では、ギリシャ支援策が固まったことを受けて安心感が広がり、10年物ギリシャ国債の利回りが低下。ユーロ圏の指標であるドイツ国債との利回り格差は前日の3.07%から3.30%に縮小した。
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