2010/4/26

ギリシャがユーロ圏・IMFに支援要請、赤字拡大で自力再建断念

この記事の要約

財政危機に直面するギリシャのパパンドレウ首相は23日、ユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)による緊急金融支援を要請したと発表した。2009年の財政赤字が当初見込みより悪化していたことが前日に判明して国債利回りが上昇し、市 […]

財政危機に直面するギリシャのパパンドレウ首相は23日、ユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)による緊急金融支援を要請したと発表した。2009年の財政赤字が当初見込みより悪化していたことが前日に判明して国債利回りが上昇し、市場での資金調達が一段と困難になったことを受けたもの。1999年のユーロ導入以来、ユーロ参加国が他のユーロ圏諸国、IMFから支援を受けるのは初めてとなる。

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ユーロ圏は3月25日の臨時首脳会議で、ギリシャが金融市場で資金調達できなくなったときの最後の手段として、各国とIMFが協調融資することで合意。11日には各国が2010年に最大300億ユーロを年利約5%で融資(期間3年)する方針を打ち出した。IMFは最大150億ユーロを負担する見込みで、融資総額は最大450億ユーロに達する。

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ギリシャ政府と欧州委員会、IMF、欧州中央銀行(ECB)は21日から支援実施の条件を詰める協議を行っている。通常は話し合いがまとまるまで2~3週間はかかるとみられていたが、ギリシャの支援要請を受けて迅速に対応する見込み。EUの報道官は「数日」で協議が完了するとしている。IMFのストロスカーン専務理事も「要請に迅速に応じる用意がある」と語った。

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ギリシャの財政危機は、昨年10月の政権交代に伴い、前政権が財政赤字を“粉飾”して過少申告していたことが発覚したのが発端。09年の財政赤字は当初、国内総生産(GDP)比3.7%とされていたが、EUの財政規律で上限となっているGDP比3%を大幅に上回る同12.7%まで膨らんでいることが分かってデフォルト(債務不履行)の懸念が浮上しただけでなく、ポルトガルなどユーロ圏の他の財政悪化国にも信用不安が広がりかねない事態を招いていた。

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09年財政赤字、GDP比13.6%に

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年内に巨額の国債償還を控えるギリシャ政府はこれまで、市場で新たに国債発行して資金を調達してしのいできた。ところが、EU統計局ユーロスタットが22日公表した最新の財政統計で、GDP比12.7%とされていた09年の赤字がGDP比13.6%であることが発覚。ユーロスタットは同国の社会保障基金の運用実績などに疑問があるとしてなお調査を続けており、赤字幅はさらに最大0.5ポイント膨らんでGDP比14%に達する可能性が出てきた。

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ギリシャ政府は赤字を2012年までに3%以下まで削減することを求められており、すでにまとめた財政再建計画では今年の赤字を8.7%まで引き下げる予定だ。しかし、09年の赤字が想定以上に膨らんだことで、財政再建計画に狂いが生じ、デフォルトに陥る懸念が一段と強まったことから、ギリシャ国債の利回りは急上昇。10年物国債の利回りは22日、8.97%まで上昇し、ユーロ導入後の最高水準を更新した。ドイツ国債との利回り格差は6%に拡大した。また、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日、ギリシャ国債の格付けを「A2」から1段階引き下げて「A3」とした。これを受けて、ギリシャ政府は自力での資金調達は困難になったと判断し、ついに緊急支援要請に追い込まれた。

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IMFなど3機関との協議で支援が決まれば、ユーロ圏各国は議会の承認を経て融資を実施する。ギリシャが85億ユーロの国債償還を迫られる5月19日までに一部が実施される見通しだ。

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各国の融資額はECBへの拠出割合に応じて決まる。ドイツの負担が最大で、300億ユーロのうち最大84億ユーロを融資する見込みだ。同国ではギリシャの放漫財政のつけを他の国が払うのはおかしいとする世論が根強く、政府はこれまで支援に慎重な姿勢をみせていたが、メルケル首相は23日、ギリシャによる財政再建努力の強化など「非常に厳しい条件」をつけることを条件に、融資に応じる意向を示した。

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ギリシャはユーロ圏、IMFからの緊急支援により、当面はデフォルト危機を回避できる見込みとなった。ただ、累積公的債務は3,000億ユーロに上り、来年以降も厳しい財政運営を迫られる。IMFから融資を受けることで、財政再建に同機関が介入し、強制的に大規模な歳出削減を求められることにもなる。国民が厳しい財政緊縮に反発し、官民労組のストライキが頻発する中、財政再建の道のりは険しい。

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