2010/5/3

ギリシャへの1100億ユーロ融資承認、追加財政再建策決定で=ユーロ圏

この記事の要約

ユーロ圏16カ国は2日に緊急財務相会合を開き、財政危機に直面するギリシャに対して、ユーロ圏各国とIMFが今後3年間で総額1,100億ユーロの緊急融資を行うことを承認した。ギリシャ政府と欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、 […]

ユーロ圏16カ国は2日に緊急財務相会合を開き、財政危機に直面するギリシャに対して、ユーロ圏各国とIMFが今後3年間で総額1,100億ユーロの緊急融資を行うことを承認した。ギリシャ政府と欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)が同日、支援の前提条件となる追加財政再建策について合意したのを受けたもの。800億ユーロはユーロ圏(ギリシャを除く15カ国)が負担、残りはIMFが受け持つ。ユーロ圏は各国議会の承認を得た上で、ギリシャが次回の国債償還期限を迎える19日までに第1弾の融資を実行したい考えだ。

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EUは4月11日、ユーロ圏諸国とIMFが2010年に総額450億ユーロの協調融資を行うことを決め、ギリシャ政府は同23日に支援発動を要請した。ただ、支援実施には政府が向こう3年の財政再建計画を固め、欧州委員会、IMF、ECBの承認を取り付ける必要があった。

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2009年の財政赤字が国内総生産(GDP)比13.6%に達したギリシャは、すでに公務員の人件費削減、増税による財政再建策を打ち出していた。新たに策定した追加措置は、付加価値税(VAT)の税率を21%から23%に引き上げるほか、たばこ・アルコール類の課税拡大、公務員給与や公的年金の給付追加削減などを柱とする内容。これにより財政赤字を2014年までにEUの財政規律で上限となっているGDP比3%以下に抑える。

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同計画に伴う赤字削減は、3年間でGDP の11%に相当する300億ユーロに達する。赤字をGDP比3%以下まで削減するとう最終目標の達成期限は従来の2012年から2年延長されたとはいえ、ギリシャは融資と引き換えに一段と厳しい歳出削減を迫られる。これによる景気悪化は避けられず、政府は今年と来年はマイナス成長が続くと見込んでいる。ユーロ圏、IMFから受ける協調融資のうち100億ユーロは、景気悪化によって打撃を受ける国内銀行を支援するための特別基金創設に使われる。

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ギリシャのパパンドレウ首相は今回の合意について、「国家の破たんだけは避けなければならない」として、国民に理解を求めたが。しかし、増税などに反発するデモや公務員のストライキが拡大するのは必至で、計画通りに財政再建を進めるのは容易でない。このため、いつかは債務再編を迫られるとの見方が少なくない。

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信用不安飛び火の懸念増幅

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ギリシャへの支援発動をめぐっては、ユーロ圏による融資の28%を担い、最も負担が大きいドイツ政府が、国内世論の反発を背景に慎重な姿勢をみせ、発動まで時間がかかるとの見方がくすぶっていた。しかし、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が4月27日、ギリシャ長期国債の格付けを3段階引き下げ、投機的水準の「BBプラス」に設定。これによりギリシャは国債の利回りが一段と上昇して、国債発行による資金調達のコストが許容水準を大幅に超え、市場で資金を調達するのが困難な状況となった。85億ユーロの国債の償還期限である5月19日までに第1弾の融資が必要な状況に追い込まれた結果、ドイツも支援容認に傾いた。

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S&Pがギリシャと同時に、同じく財政が悪化しているポルトガルの格付けを2段階引き下げ、28日にはスペインの格付けも1段階引き下げたことで、信用不安がギリシャ以外のユーロ圏にも飛び火する懸念が現実味を帯び始め、火元であるギリシャへの金融支援を迅速に実施して信用不安を緩和するよう求める声が強まっていたことも、支援発動に踏み切らせた一因となった。支援を今年限りでなく2012年まで継続することを決め、1,100億ユーロという巨額の枠を用意したのは、こうした市場の不安を鎮めたいという狙いがある。

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ユーロ圏16カ国は7日に臨時首脳会議を開き、ギリシャ支援発動に必要な各国議会による承認の手続きの進行状況を確認するほか、信用不安拡大の防止策などについて協議する見通しだ。

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