2010/6/7

総合 –EUウオッチャー

ハンガリーが第2のギリシャか、前政権の“粉飾”疑惑浮上

この記事の要約

5月に政権交代したばかりのハンガリーで、前政権が財政赤字を“粉飾”したという疑惑が持ち上がっている。これを受けて、同国の赤字が実際には大幅に膨らんでおり、第2のギリシャになるとの懸念が浮上。金融市場は動揺し、4日にハンガ […]

5月に政権交代したばかりのハンガリーで、前政権が財政赤字を“粉飾”したという疑惑が持ち上がっている。これを受けて、同国の赤字が実際には大幅に膨らんでおり、第2のギリシャになるとの懸念が浮上。金融市場は動揺し、4日にハンガリーの通貨フォリント、株価は下落。また、ハンガリーはユーロ圏ではないものの、ギリシャ危機に端を発した欧州の信用不安拡大の懸念から、ユーロも対ドルで4年ぶりの安値を付けた。

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今回の問題のきっかけとなったのは、与党フィデスのコーシャ副党首の3日の発言。同副党首はハンガリーの財政赤字が前政権の報告より深刻で、「ギリシャのような危機に陥るのを避けるのは望み薄だ」と語った。これを受けてオルバン首相の報道官は4日の記者会見で、前政権が財政赤字を粉飾し、実際より小さくみせていたとの見方を示し、「データを粉飾したギリシャには最後の審判の瞬間が訪れた。ハンガリーもその寸前だ」とコメント。コーシャ副党首の発言内容は「誇張ではない」と述べたことから、一気に市場で動揺が広がった。ギリシャの財政危機問題が、同じく前政権による粉飾が発覚してから深刻化したことが背景にある。

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ハンガリーは2008年のリーマンショックに端を発した世界的な金融・経済危機で大きな打撃を受け、EUと国際通貨基金(IMF)、世界銀行から金融支援を受けた。その条件として財政改善を迫られ、今年の赤字を国内総生産(GDP)比3.8%まで削減することを約束している。しかし、政権内からは同赤字が最大7.5%程度まで膨らむとの見方が出た。

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首相報道官は政府が近日中に正確な財政状況を報告する方針であることを明らかにし、「政府はギリシャが歩んだ道をたどらない決意だ。実態を把握した上で、断固とした措置をとる」と述べ、財政改善に注力する姿勢を示した。

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ただ、ハンガリーの財政状況はギリシャとは大きく違い、昨年の赤字はギリシャのGDP 比13.6%に対して4%にすぎず、EUが上限とする3%を1ポイント上回っているだけ。債務残高もGDP比70%台と、ほぼEUの平均水準で、ギリシャの115%と大きな差がある。さらに、双子の赤字ではなく、経常収支は黒字となっている。前政権が赤字をどれだけ粉飾したか不明だが、デフォルト(債務不履行)に陥りかねないほど財政が悪化しているとは思われず、新政権は財政悪化を誇張したとの指摘も多い。実際、ハンガリー中央銀行は4日、今年の財政赤字はGDP 4.5%となり、目標の3.8%を上回るものの、危険水準とはいえないとする声明を発表。市場の敏感な反応にあわてた政府は、ヴァルガ官房長官が5日に記者会見を開き、財政悪化に関する一連の発言について「誇張だ」と述べ、政府が今年の赤字削減目標達成に向けて、必要な措置を講じることを誓った。

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新政権が市場に動揺を与えることを承知で財政悪化を強調したことについては、公約としていた減税が実際には不可能で、財政再建を優先しなければならない状況になったため、危機を演出したとの見方が出ている。

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