欧州中央銀行(ECB)は10日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、ユーロ圏16カ国に適用される最重要政策金利を現行の年1.0%に据え置くことを決めた。金利据え置きは13カ月連続となる。一方、トリシェ総裁は金融市場への3カ月物資金の無制限供給を9月まで続けることや、5月に開始したユーロ圏諸国の国債の買い取りを当面は継続する意向を表明。ギリシャの財政危機に端を発した信用不安がくすぶる中、金融危機対策で導入した非常時の金融政策を元に戻す「出口戦略」が後退を余儀なくされている。
\ユーロ圏ではギリシャなど財政が悪化している国がデフォルト(債務不履行)に陥る懸念がEU、国際通貨基金(IMF)の緊急融資制度が整ったことで、ひとまず遠のいた。しかし、各国が財政再建を迫られて、緊縮政策に動いていることから、緩やかに回復に向かっている景気が再び悪化するとの懸念が根強い。ECBが同日公表した内部経済予測では、2010年の予想成長率は1%となり、前回(3月)の0.8%から上方修正したものの、2011年については内需低迷を見越し、0.3ポイント引き下げて1.2%とした。トリシェ総裁も景気見通しについて「非常に不透明感が強い」と警戒感を隠さなかった。
\ECBによるユーロ圏の国債買い取りは異例の措置で、一部ではECBの至上命題である物価の安定を損ないかねないとの批判がある。しかし、ECBは3カ月物資金の無制限供給とあわせ、金融市場の不安払しょくを最優先した格好だ。
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