2010/9/13

総合 –EUウオッチャー

仏政府のロマ人送還、欧州議会が即時停止求める決議

この記事の要約

欧州議会9日の本会議で、フランス政府によるロマ人不法滞在者の本国への送還を即時停止するよう求める決議を賛成多数(賛成337、反対245、棄権51)で採択した。決議に法的拘束力はないが、サルコジ政権に圧力をかけて自制を促す […]

欧州議会9日の本会議で、フランス政府によるロマ人不法滞在者の本国への送還を即時停止するよう求める決議を賛成多数(賛成337、反対245、棄権51)で採択した。決議に法的拘束力はないが、サルコジ政権に圧力をかけて自制を促すとともに、フランスに追従する構えのイタリアなどを牽制する狙いがある。ただ、仏政府は不法滞在者による犯罪の防止が目的で、ロマを標的にしたものではないと反論。引き続きルーマニアなどへの送還を進める意向を示している。

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決議は、域内における移動の自由はすべてのEU市民に保証された基本的な権利であり、特定の集団を追放する行為は人種や民族による差別禁止を定めたEU法に違反すると指摘。仏政府の対応に「深い懸念」を表明した。さらに欧州委員会や加盟国政府に対しても「対応が遅く、限定的」と批判し、積極的な介入を求めた。欧州議会の中道左派勢力は欧州委に対し、仏政府による送還措置をEU法違反と断定して見直しを命じるよう求めていたが、欧州委のレディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)は今月7日の欧州議会本会議で、「調査は継続中」として合法性についての判断を回避。すべての加盟国にEU法と人権を尊重してロマの社会参加を促す政策を推進するよう呼びかけるにとどめ、フランスを名指しで批判することはしなかった。

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欧州議会の決議を受けてフランスのベッソン移民相は声明を発表し、「フランスに居住するための条件を満たしていない欧州市民は、自発的あるいは強制的に本国に送還される」と明言。不法滞在するロマをルーマニアやブルガリアなど中・東欧諸国に送還する措置を継続する方針を明らかにした。その一方で同相は、「フランスはロマに対して特別な対応を取ったことはない」とも述べ、今回の措置がロマを標的にしたものではない点を強調した。

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