2010/11/22

産業・貿易

欧州委がCAP改革の方向性を提示、格差是正と環境保全型農業に重点

この記事の要約

欧州委員会は18日、EU共通農業政策(CAP)の改革を進めるための施策の方向性をまとめた政策文書を公表した。農家の収入を保証するための直接支払いが国や地域によって大きく異なる現状を是正するため、支給額に上限を設けることや […]

欧州委員会は18日、EU共通農業政策(CAP)の改革を進めるための施策の方向性をまとめた政策文書を公表した。農家の収入を保証するための直接支払いが国や地域によって大きく異なる現状を是正するため、支給額に上限を設けることや、環境保全に積極的に取り組む農家により多く補助金が行き渡る仕組みを導入することなどを提案している。欧州委は2014-20年の新たな予算枠で実施されるCAPについて具体策の検討を進め、来年半ばをめどに法案を提出する方針を示している。

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CAPはEU予算の約4割を占める最大の支出項目で、年間約600億ユーロが投じられている。農家の所得を保証するための価格・所得政策と、加盟国間および地域間の経済力や生産条件などの格差を是正するための農村開発政策がCAPの2本柱だが、従来からの加盟国と新規加盟国の間では補助金額に大きな格差があり、中東欧諸国からは補助金の再配分を求める声が強まっている。しかし、金融・経済危機で巨額の財政赤字を抱える加盟国にとって農業分野への支出は大きな負担になっており、直接支払いの削減と農村開発政策の重点化がCAP改革の大きな流れになっている。

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欧州委は2020年に向けたCAP政策の方向性として、所得政策、市場管理政策、農村開発政策についてそれぞれ3通りのオプションを提示した。農家への直接支払いについては国や地域による格差是正を図るうえで、過去の支払い実績に基づいて支払い額を決定する現行システムを見直す必要があると指摘。土壌・環境保全への取り組みを評価の基準とすることや、支払額に上限を設けることなどを提案している。

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一方、市場管理政策では価格支持のためのリスク管理の強化や、最終的に原則としてすべての市場管理を撤廃することなどを構想に盛り込んだ。さらに農村開発政策に関しては、計画の緊急性や重要性に応じて加盟国間で補助金の再配分を行うことや、気候変動への対応や環境保全につながる農法への取り組みに対して重点的に補助金を割り当てることなどを提案している。

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欧州委のチオロシュ委員(農業・農村開発担当)は声明で「CAPを環境に配慮した、より公正で効果的なものにしなければならない」と強調。「CAPは農業者だけのものではなく、消費者であり、納税者であるすべてのEU市民のためのものだ」と述べ、経済面だけでなく、環境面でも欧州農業の競争力を高めていく必要があると指摘した。

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