2011/5/16

総合 –EUウオッチャー

シェンゲン協定見直しの調整難航、EU内相理が結論持ち越し

この記事の要約

EU加盟国は12日、ブリュッセルで臨時内相理事会を開き、EU加盟国などが出入国審査を廃止し、旅行者が域内をパスポートなしで移動できるようにする「シェンゲン協定」の見直しについて協議したが、意見が分かれて結論を持ち越した。 […]

EU加盟国は12日、ブリュッセルで臨時内相理事会を開き、EU加盟国などが出入国審査を廃止し、旅行者が域内をパスポートなしで移動できるようにする「シェンゲン協定」の見直しについて協議したが、意見が分かれて結論を持ち越した。6月24日のEU首脳会議で最終調整を図る。

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シェンゲン協定の見直しは、チュニジアの政変をきっかけに北アフリカ諸国からイタリア、フランスに大量の難民や不法移民が流入していることを受けて浮上。欧州委員会は5月初め、ある加盟国が国境での出入国を管理できなくなるような不測の事態が生じた場合に限って、例外的に当該国が出入国審査を復活することを認める案を提示していた。

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EU筋がAFP通信に明らかにしたところによると、同日の理事会ではEU27カ国のうち仏、伊など15カ国が欧州委案を支持。しかし、ベルギー、スペインなど一部の国が、欧州統合の象徴であるシェンゲン協定の安易な見直しによる規制強化に慎重な姿勢を示し、態度を保留した。ベルギーのワセレ移民相は、不法移民対策ではEU圏外との国境管理強化や、不法移民の本国への送還に集中するべきだと主張している。

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一方、協定見直しに賛同している国の中でも、出入国審査を各国が独自の判断で復活できるようにするか、EUの承認を必要とするかについて分かれており、調整は難航が予想される。

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不法移民問題をめぐっては、デンマーク政府が11日、ドイツ、スウェーデンとの国境で出入国管理を開始する方針を突然打ち出し、波紋を広げている。同措置は極右政党の要請に応じたもので、政府は一般旅行者のパスポート検査は行わず、密輸など犯罪対策として税関検査を復活させるだけだと主張しているが、シェンゲン協定見直しに関するEUの決定を待たずに一方的に表明したことから、理事会でも批判が噴出。欧州委は調査に乗り出し、ルール違反と認定されれば断固とした措置をとる意向を示している。

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