2011/8/8

総合 –EUウオッチャー

欧州委員長がEFSFの規模拡大要請、伊・スペインへの信用不安拡大で

この記事の要約

欧州委員会のバローゾ委員長は4日、財政危機に直面するユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」のさらなる拡充が必要との見解を示した。ギリシャなどからユーロ圏の大国であるイタリ […]

欧州委員会のバローゾ委員長は4日、財政危機に直面するユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」のさらなる拡充が必要との見解を示した。ギリシャなどからユーロ圏の大国であるイタリア、スペインに飛び火した信用不安が本格的し、市場の不安が高まっていることを受けたもので、ユーロ圏各国にEFSFの融資枠拡大を検討するよう求めている。

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ユーロ参加国の政府保証によるEFSFは、深刻な財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額7,500億ユーロの「ユーロ防衛基金」の中核。これまでにギリシャ、アイルランド、ポルトガルに融資を行っている。

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ユーロ圏17カ国は7月21日の緊急首脳会議で、ギリシャを震源地とした信用不安が他のユーロ圏諸国にも及んでいることへの対策として、EFSFの機能を強化し、対象国が危機的状況に陥る前に緊急融資を行えるようにすることで合意。危機に陥った国の国債を流通市場で買い取ることができるようにすることも決めた。

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しかし、一部で取りざたされていた融資枠の拡大が見送られたことから信用不安は収まらず、財政が悪化しているイタリア、スペインの10年物国債の利回りは6%超に急上昇し、ユーロ導入後の最高水準を更新。スペインのザパテロ首相は夏休みの予定を急きょ変更し、対応に追われる事態となっている。スペインは4日、中期国債の発行で33億ユーロを調達したが、平均落札利回りは3年物で4.813%と、前回(6月2日)の4.037%から急騰。4年物の利回りも前回(2009年10月)の2.862%から4.984%に上昇した。この水準が続けば、国債発行による資金調達は難しい状況だ。

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バローゾ委員長はEU各国の首脳に宛てた書簡で、先の首脳会議で合意したEFSFの機能強化だけでは市場の不安を鎮めるには不十分で、「ユーロ圏の危機対応能力に対する投資家の疑念が強まっている」と指摘。「(信用不安の)波及リスクに対処できるような見直しが早急に必要だ」と述べ、融資枠の拡大を含めた対策を検討するよう呼びかけた。EFSFを2013年6月から引き継ぐ恒常的な支援基金「欧州安定メカニズム(ESM)」の融資枠についても、合意済みの5,000億ユーロから拡大するよう求めた。

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すでにEUは、EFSF の融資枠を当初の2,500億ユーロから4,400億ユーロに引き上げることを決めている。しかし、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルへの支援により、今後に予定されている融資実行を勘案した残り資金は3,000億ユーロ程度にとどまっている。ユーロ圏3、4位の経済規模を持つイタリア、スペインの信用不安がさらに深刻化し、両国が支援を要請した場合には対応しきれない。バローゾ委員長の今回の動きには、両国が危機的な状況に陥る前に十分な予防措置を講じ、市場の不安を払しょくして信用不安の終息を図る狙いがある。

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ただ、EFSFの規模拡大には主要国のドイツがかねてより難色を示しており、同国の対応が大きなカギとなりそうだ。

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