2011/8/22

総合 –EUウオッチャー

フィッチがキプロスを2段階格下げ、EUへの金融支援要請見込み

この記事の要約

欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスは10日、キプロスの外貨建ておよび現地通貨建ての長期発行体デフォルト格付け(IDR)を「Aマイナス」から2段階下の「BBB」に引き下げたと発表した。長期IDRの見通しは「ネガティブ […]

欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスは10日、キプロスの外貨建ておよび現地通貨建ての長期発行体デフォルト格付け(IDR)を「Aマイナス」から2段階下の「BBB」に引き下げたと発表した。長期IDRの見通しは「ネガティブ」。短期外貨建てIDRも「F3」から「F1」に引き下げ、カントリーシーリングは「AAA」で据え置いた。

\

フィッチは、キプロスの格下げは「足元の財政状況の悪化と今後予想される悪化を反映したものだ」と説明。市場環境から考えて、EUなどからの公的支援がなければ、同国が2012年上半期には資金繰りに行き詰まり、国債償還が難しくなるとして、近い将来に公的支援が行われる可能性が高いとの見方を示した。

\

キプロスでは先月に海軍基地の武器貯蔵庫で大規模な爆発事故が発生し、国内最大の発電所が送電を停止する事態に陥った。フィッチのソブリン部門のクリス・プライス部長は、国内の電力需要の半分を供給していた発電所がストップしたことによる影響は深刻だと指摘。今年の財政赤字見通しを6月に発表した対国内総生産(GDP)比で4%から7%に大幅に上方修正し、今年と来年のGDP成長率がそれぞれ1.5%押し下げられるとした。また、政府がまとめた増税と歳出削減を柱とする財政再建策については、過去の政権が財政再建や構造改革に失敗してきたことに言及、「実行できるか疑問がある」と厳しい見方を示した。

\

キプロスのキキス・カザミアス財務相はフィッチによる格下げの発表を受け、「わが国が救済を受ける方向に向かっているとの判断は非常に嘆かわしい」と述べ、フィッチの判断は「行き過ぎだ」と批判した。同財務相は、今月末に議会で採決にかけられる財政再建法案が可決された場合、今年の財政赤字比率は5.5%と昨年の5.3%から小幅の拡大するにとどまると指摘。支援は必要ないと強調した。財政再建法案には、付加価値税や所得税の税率引き上げ、公務員給与の凍結、社会保険料の引き上げ、公務員の削減のほか、固定資産税や預金利息税の引き上げなどが盛り込まれている。

\

なお、3大格付け会社のうちスタンダード・プアーズ(S&P)とムーディーズの2社は先月、キプロスの格付けをそれぞれ「BBBプラス」、「Baa1」に引き下げている。

\