2011/8/22

産業・貿易

農家補助金は年30万ユーロが上限、CAP改革で欧州委が提案へ

この記事の要約

欧州委員会は現在、EU共通農業政策(CAP)の抜本的な見直しを進めているが、改革の一環として農家に対する補助金支給額に年間30万ユーロの上限を設ける方針を固めたもようだ。EU関係者の話として複数のメディアが報じた。欧州委 […]

欧州委員会は現在、EU共通農業政策(CAP)の抜本的な見直しを進めているが、改革の一環として農家に対する補助金支給額に年間30万ユーロの上限を設ける方針を固めたもようだ。EU関係者の話として複数のメディアが報じた。欧州委は9月にもCAP改革に関する法案をまとめる見通しだが、補助金の大幅な削減に対しては、最大の受益国であるフランスを中心に加盟国の反発が予想される。

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CAPはEU予算の約4割を占める最大の支出項目。農業者の所得を保証するための価格・所得政策や、加盟国間および地域間の経済力や生産条件などの格差を是正するための農村開発政策などに年間約600億ユーロが投じられている。しかし、金融・経済危機で巨額の財政赤字を抱える加盟国にとって農業分野への支出は大きな負担になっており、欧州委は昨年まとめた2014-20年の予算枠で実施されるCAPについての政策文書で、農家に対する直接支払いに上限を設けることや、土壌・環境保全への取り組みを評価の基準とすることなどを提案していた。

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AFP通信などによると、14年以降の新制度では支給額が年間15万ユーロを超える全農家への補助金が段階的に削減され、同時に年間30万ユーロの上限が設けられる。また、年間15万ユーロ以上の補助金はすべて課税対象となる。一方、気候変動への対応や環境保全につながる農法などに対する補助金は別枠で支給され、課税対象からも除外される。

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一連の施策により、農家に対する直接支払いは年間でおよそ25億ユーロ削減される見通し。新システムは過去の支払い実績に基づく支給制度の下で多額の補助金を受け取ってきた大規模経営の農家を直撃するため、全体的に小規模農家が多く、西欧諸国との補助金格差に根強い不満を抱く東欧諸国は欧州委の提案を支持する公算が大きい。しかし、フランスや英国などの反発は必至で、CAP改革に向けた議論は難航が予想される。

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