2011/8/29

総合 –EUウオッチャー

EUが対シリア制裁を再強化、原油禁輸も検討

この記事の要約

EUは23日付けで、対シリア追加制裁措置を実施した。新たに15人と企業5社が対象リストに加えられ、EU域内に保有する資産が凍結されたほか、域内への渡航が禁止された。制裁対象者はこれで、合わせて50人と9社となった。\ 今 […]

EUは23日付けで、対シリア追加制裁措置を実施した。新たに15人と企業5社が対象リストに加えられ、EU域内に保有する資産が凍結されたほか、域内への渡航が禁止された。制裁対象者はこれで、合わせて50人と9社となった。

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今回の追加制裁は、再三にわたる欧米の呼びかけにもかかわらず、シリア政府がデモ弾圧を継続していることを受けたもので、EUは今後も同国への圧力を強めていく考えだ。先週からシリア産原油の禁輸措置を発動した米国に続き、同様の措置に踏み切る方向で検討を進めている。英仏独西の各国首脳は禁輸に前向きな意向で、なかでも英国は、禁輸措置を実施してもシリアの「国民への打撃」は大きくないと主張している。

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シリア産原油の輸出先は約9割がEU加盟国で、輸出量の多い順に、デンマーク、イタリア、フランス、オランダ、オーストリア、スペイン向け。生産量はアラブ諸国の中では比較的少なく、輸出量は日量14~15万バレル余りとなっている。しかし、石油収入はシリアの歳入の25%を占めており、欧米の禁輸措置は同国にとって大きな打撃となるはずだ。なお、禁輸について、ロシアとトルコは反対の姿勢を示している。

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シリア問題をめぐっては、18日に国連の人権高等弁務官事務所(OHCHR)が報告書を発表。同国政府によるデモ弾圧は「人道に対する罪」の可能性があり、国際刑事裁判所(ICC)による調査が必要であるとの見解を表明した。22日には人権理事会が特別会合を開催、調査団の派遣について検討を始めている。さらに同理事会は翌23日、シリアに対する非難決議を採択した。ナビ・ピレイ人権高等弁務官によれば、今年3月に反政府派による抗議デモが始まって以来、シリア政府の暴力的な取り締まりで死亡した国民は約2,200人に上っている。

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 こうしたなか、シリアの反体制派は22日、トルコのイスタンブールで集会を行い、「国民評議会」の設置を発表した。先にカダフィ政権が事実上崩壊したリビアの例にならった行動とみられている。

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