欧州委員会はこのほど、カナダ・オンタリオ州の再生可能エネルギー政策を不当として世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請した。同州は再生可能エネルギーの発電事業者に対する支援策として、州内で生産された製品の使用を条件に事実上の補助金を交付する制度を導入しており、欧州委は同措置が補助金と国内産品の使用を結びつけることを禁止したWTO協定に違反すると主張している。
\EUが問題にしているのは、再生可能エネルギーの利用促進を目的にオンタリオ州が2009年に制定した「グリーンエネルギー経済法(GEA)」に基づく「フィード・イン・タリフ=FIT」と呼ばれる固定価格買取制度。これは風力や太陽光によって発電された電力をオンタリオ電力公社(OPA)が市場価格より高い価格で買い取ることを認める制度で、事実上の補助金にあたる。発電事業者が同スキームに参加するには、州内の工場で生産された太陽光パネルなど、一定割合以上の州産品を使用することが条件となっており(ローカルコンテント要求)、太陽光発電では初期費用の40-50%、風力発電では25%(2011年以降のプロジェクトではそれぞれ60%、50%)について、地元企業の製品やサービスを採用する必要がある。
\EUはカナダ政府との二国間協議による解決を試みたが、交渉が不調に終わったため、パネルで争うことを決めた。欧州委によると、EUからカナダへの風力および太陽光発電関連製品の輸出額は年間3億-6億ユーロ(07-09年実績)。州産品を優遇するローカルコンテント要求が撤廃されれば、カナダ向けの輸出は大幅に拡大するとみられている。
\なお、オンタリオ州の再生可能エネルギー政策をめぐっては、日本も固定価格買取制度のローカルコンテント要求がWTOルールに違反するとしてWTOに提訴し、7月に紛争処理小委員会(パネル)が設置されている。
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