2012/1/23

総合 –EUウオッチャー

欧州金融安定基金も格下げ、仏などの最上級転落で=S&P

この記事の要約

大手格付け会社の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行うEUの「欧州金融安定基金(EFSF)」の長期信用格付けを最上級の「トリプルA(AAA)」から1 […]

大手格付け会社の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行うEUの「欧州金融安定基金(EFSF)」の長期信用格付けを最上級の「トリプルA(AAA)」から1段階引き下げ、「ダブルAプラス(AA+)」にすると発表した。同基金を支えるフランスなどの格下げに伴うもの。EFSFはEUの信用不安対策の柱だが、格下げによって信用力が低下し、資金調達コストが膨らむ恐れがあり、ギリシャなど重債務国を支える余地が狭まることになる。

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EFSFは、ドイツなどユーロ圏の信用力が高い国の債務保証を後ろ盾に、低いコストで資金を調達し、財政危機のため自力での資金調達が困難な国に融資する枠組み。これまで最高格付けを維持し、EFSF債発行によって容易に資金を調達してきた。

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しかし、S&Pは13日、EUの信用不安対応が不十分として、ユーロ圏9カ国の長期信用格付けを一斉に格下げ。最上級の格付けを与えてきたユーロ圏6カ国のうち、フランスとオーストリアを1段階引き下げた。さらに、オランダ、フィンランド、ルクセンブルクの格付け見通しを「ネガティブ」とした。このため、同6カ国の信用供与に支えられるEFSFの格付けも引き下げた。S&Pは声明で、格下げについて「EFSF の債務が、AAAの格付けを持つメンバー国によってもはや十分に保証されないようになった」と説明した。

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EFSFは4,400億ユーロ規模だが、すでに支援対象となっているギリシャ、アイルランド、ポルトガルへの融資枠を除くと2,500億ユーロにとどまる。財政危機が深刻化しているイタリア、スペインが支援を求めた場合には支えきれない。このため、EUは規模拡大で合意しているが、実施は遅れている。

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EUはEFSFの格下げを受けて、融資枠拡大に加えて信用力の強化を検討する見通し。S&Pは「EFSFの信用強化が実施されれば、格付けをAAAに引き上げる」としており、最上級格付けを維持するドイツなど4カ国の信用供与を拡大する案などが有力視されている。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も16日、EFSFが低金利での融資能力を維持するためには「AAA諸国の追加拠出が必要だ」と述べた。

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しかし、最大の拠出国であるドイツのショイブレ財務相は同日、「EFSFの信用保証額は、当面は十分だ」と述べ、これに応じない意向を示した。

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