2012/3/5

産業・貿易

WTO上級委がボーイング補助金で裁定、紛争終結へ交渉本格化か

この記事の要約

米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴している問題で、WTOの上級委員会は2月末までに最終的な結論をまとめ、EU・米の双方に裁定を通知した。AFP通信が関係筋の […]

米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴している問題で、WTOの上級委員会は2月末までに最終的な結論をまとめ、EU・米の双方に裁定を通知した。AFP通信が関係筋の話として報じた。

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上級委による裁定の内容は不明だが、WTO紛争処理小委員会(パネル)は昨年3月、EUの主張をおおむね支持し、ボーイングが米政府から少なくとも53億ドルの違法な補助金を受け取ったとする最終報告をまとめた。一方、上級委は昨年5月、欧州の航空機大手エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたると結論づけたパネルの裁定を支持する判断を下しており、是正勧告を受けたEU側の対応に焦点が移っている。ボーイング向け補助金に関する上級委の裁定は今月半ばにも公表される見通しで、それを受けて紛争終結に向けたEU・米間の協議が本格化する可能性がある。

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WTOを舞台とする過去最大規模の通商紛争で焦点となっているのは、両社の新たな主力旅客機「エアバスA380」と「ボーイング787(通称ドリームライナー)」の開発に関連した支援策。EU各国のエアバスに対する補助金が世界の航空機市場で著しく競争をゆがめてきたとする米側の主張に対し、EUはボーイングも公的支援を受けて開発した軍用機向けのテクノロジーを活用してドリームライナーの開発を進めており、これは米政府による間接的な補助金にあたると反論。双方は2004年10月、両社に対する資金支援は不当な補助金にあたるとして相次いでWTOに提訴した。

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欧州委員会のクランシー通商担当報道官はAFPの取材に対し、上級委の裁定が公表されれば「航空機補助金紛争でEUと米国の置かれた立場がはっきりする」と指摘。「高度な政治レベルの交渉」が7年以上に及ぶEU・米間の通商紛争を解決する唯一の道との考えを示した。

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