2012/6/18

総合 –EUウオッチャー

ギリシャ再選挙で緊縮派が勝利、ユーロ離脱の危機回避

この記事の要約

17日に実施されたギリシャ議会(定数300)選挙の再選挙で、財政再建に向けた緊縮策の推進を唱える旧連立与党が過半数の議席を確保した。これによってEUなどによる金融支援の条件として約束した緊縮策の継続が決定。ギリシャのユー […]

17日に実施されたギリシャ議会(定数300)選挙の再選挙で、財政再建に向けた緊縮策の推進を唱える旧連立与党が過半数の議席を確保した。これによってEUなどによる金融支援の条件として約束した緊縮策の継続が決定。ギリシャのユーロ離脱の危機が当面は回避されることになった。

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開票率99%の時点での主要政党の得票率は、旧与党の新民主主義党が29.7%で第1党となった。反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)は27%で2位。新民主主義党と連立政権を組んでいた全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)が12.3%で3位となった。

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第1党には50議席が追加配分されるため、新民主主義党は129議席を獲得する見通し。PASOKの33議席と合わせて、旧連立与党が過半数の151議席を上回る162議席を確保した。SYRIZA の獲得議席は71議席。

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5月6日に実施された第1回の投票では、厳しい緊縮策に対する国民の不満を受けて、旧与党が惨敗。獲得議席は過半数に届かない149議席にとどまった。代わって反緊縮派のSYRIZAが52議席を獲得して、第2党に躍り出た。単独で過半数を確保した党がなかったことから開始された連立交渉は、緊縮策と反緊縮派の溝が埋まらず不調に終わり、再選挙の実施が決まった。

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ギリシャは信用不安でデフォルト(債務不履行)の危機に陥り、EUと国際通貨基金(IMF)から総額2,400億ユーロの金融支援(第1次、2次)を取り付けたが、見返りに厳しい緊縮策の実施を義務付けられている。これに関してSYRIZAなど反緊縮派は、財政引き締めだけでは問題の解決にはならず、成長促進策も必要と主張し、緊縮合意の破棄を宣言。再選挙で反緊縮派の政権が発足すると、緊縮破棄をEUが認めず、支援が打ち切られるほか、ギリシャのユーロ離脱を招いて欧州のみならず世界の金融市場が大混乱する恐れがあることから、その成り行きが世界中の注目を集めていた。

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ギリシャ国民は緊縮策には反対しているものの、ユーロ離脱は望んでいない。事実上のユーロ離脱の是非をめぐる国民投票という様相を呈した再選挙は大接戦となったが、ユーロ残留を求める動きが強まり、旧連立与党が失地を回復。SYRIZAは得票を伸ばしたものの僅差で新民主主義党に及ばなかった。新民主主義党のサマラス党首は「国民はユーロ圏にとどまることを選んだ」と勝利を宣言した。

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新民主主義党のサマラス党首は18日にPASOKなどとの連立協議に入る。PASOKは挙国一致内閣として、SYRIZA、穏健な反緊縮派の第6党・民主左派(17議席)の4党による連立政権樹立が望ましいとしているが、SYRIZAは拒否を明言している。それでも新民主主義党とPASOKだけで過半数を確保しているため、緊縮路線推進の政権が発足するのは確実だ。これを受けて、ギリシャのユーロ離脱の危機が当面は回避されることから、18日の外国為替市場でユーロは急上昇。株価も世界的に上昇した。

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新民主主義党はEUに約束した緊縮策の推進を誓っているものの、選挙戦では反緊縮派の票を取り込むため、財政赤字削減の期限延長など小幅の見直しをEUに求める方針を打ち出していた。新政権発足後は見直し協議が最大の焦点となる。市場では、EUが新政権を支えるため、見直しに応じるとの見方が出ている。

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