2013/4/22

産業・貿易

対米FTAで仏が早期交渉開始に難色、視聴覚サービスの例外措置要求

この記事の要約

EU加盟国は18日にダブリンで非公式貿易相会議を開き、米国との自由貿易協定(FTA)交渉について協議した。欧州委員会は2014年秋までの妥結が可能との見方を示しているが、フランスは自国文化を保護する観点から映画やテレビな […]

EU加盟国は18日にダブリンで非公式貿易相会議を開き、米国との自由貿易協定(FTA)交渉について協議した。欧州委員会は2014年秋までの妥結が可能との見方を示しているが、フランスは自国文化を保護する観点から映画やテレビなどの視聴覚サービスを交渉から外すよう求めており、要求が認められない場合は交渉開始を阻止する構えをみせている。議長国アイルランドは6月の貿易相理事会で交渉開始を正式決定したい考えだが、交渉入りには全会一致の承認が必要なため、EU内の調整が難航する可能性もある。

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EUと米国は今年2月にFTAを含む包括的な貿易・投資協定の締結交渉を開始することで合意した。EU・米間のFTAが実現すれば世界全体の国内総生産(GDP)の約半分、貿易総額の約3割を占める巨大貿易圏が創設され、国際的な貿易体制に大きな影響を及ぼすことになる。

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欧州委はバローゾ委員長率いる現体制の任期中に妥結したい考えで、夏前の交渉開始を目指している。デフフト委員(通商担当)は貿易相会議終了後の会見で、14年10月末までの妥結は可能との認識を示した。また、アイルランドのブルートン雇用・企業・技術革新相は「6月14日の貿易相理事会までに正式決定したい」と述べ、早期の交渉開始に向け加盟国の意見調整を急ぐ方針を示した。

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しかし、ブリック仏貿易相は記者団に対し「文化的領域はFTA交渉から除外するというのがフランスの立場だ」と強調。「我が国にとってこれは必須条件でこの点は譲れない」と述べ、視聴覚サービスの例外措置が認められない場合は交渉開始を阻止する考えを示した。フランスでは自国の映画やテレビ産業の保護・育成を目的に、「クォータ制」を設けて外国からのコンテンツ流入を規制しており、映画産業が強い政治的影響力を持つ米国はこれを非関税障壁とみなして制度の廃止を求めている。

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EU関係者によると、貿易相会議では1カ国がフランスの主張に支持を表明したが、他の加盟国からはEUが視聴覚サービスの例外措置を求めた場合、米側はEUにとって最重要課題の1つである地理的表示(GI)の保護強化を協定に盛り込むことを拒否するといった意見が出たもよう。スウェーデンの貿易相は「EUが交渉に制約を設ければ米国も同じことをするだろう」と述べ、フランスの強硬姿勢を暗に批判した。

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