2013/5/21

環境・通信・その他

欧州委が中印航空10社への制裁を検討、排出規制の報告義務違反で

この記事の要約

新たにEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づく規制の対象となった航空部門について、欧州委員会が排出実績の報告義務を怠った中国とインドの10社への制裁を検討している。英紙フィナンシャル・タイムズなどが16日、欧州委筋の話 […]

新たにEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づく規制の対象となった航空部門について、欧州委員会が排出実績の報告義務を怠った中国とインドの10社への制裁を検討している。英紙フィナンシャル・タイムズなどが16日、欧州委筋の話として報じた。規制対象の路線を管轄するEU加盟国を通じて近く10社に警告書を送り、2カ月以内に十分な回答が得られない場合は温室効果ガス排出量に応じて制裁金の支払いを命じる可能性があるという。

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EUは2012年1月から新たに航空部門をEU-ETSの対象に加えた。新規制はEU域内を発着する定期便を運航しているすべての航空会社に対し、過去の実績に基づいて排出枠を割り当て、実際の排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという内容。しかし、域外の航空会社に対するEUの一方的な規制に対して米国、中国、インド、ロシア、日本などが強く反発。欧州委は昨年11月、国際民間航空機関(ICAO)の会合で温室効果ガス削減の向けた国際的な取り決めを検討する「気候変動ハイレベルグループ」の設置が合意されたことなどを受け、EUと域外を結ぶ路線については制度の適用を1年間凍結する方針を打ち出した。

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ただ、規制の見直し後も域内の路線については引き続きEU-ETSが適用されるため、航空会社は他の対象施設と同様、4月30日までに12年の排出実績を報告することが義務づけられていた。たとえば北京~アテネを結ぶ中国の航空機が復路はミュンヘンを経由して北京に戻るケースでは、アテネ~ミュンヘン間が規制の対象となり、その間の排出量を報告しなければならない。

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欧米メディアによると、アメリカン航空、香港のキャセイパシフィック航空、シンガポール航空、豪州のカンタス航空、ドバイのエミレーツ航空など、EU内に乗り入れている域外の主要航空会社はいずれも期限内に管轄権を持つ国(英仏独など)に検証済みのデータを提出したが、中華航空など中国の8社とエアインディアなどインドの2社は報告義務を怠った。欧州委は違反企業に対して制裁を検討しており、中印の10社は規定に基づき、二酸化炭素(CO2)換算で1トン当たり100ユーロの支払いを命じられる可能性がある。欧州委の試算によると、制裁金の規模は中国が総額240万ユーロ、インドは3万ユーロ程度になるという。

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