2013/6/10

環境・通信・その他

欧州委が「ネット中立性」のルール策定へ、反競争的アクセス制限を排除

この記事の要約

欧州委員会のクルース委員(デジタル政策担当)は4日、欧州議会でネットワーク上のトラフィックはすべて公平に扱われなければならないとする「ネット中立性」について演説し、通信事業者が自社と競合するサービスに対して回線へのアクセ […]

欧州委員会のクルース委員(デジタル政策担当)は4日、欧州議会でネットワーク上のトラフィックはすべて公平に扱われなければならないとする「ネット中立性」について演説し、通信事業者が自社と競合するサービスに対して回線へのアクセスを制限するなどの差別的行為を禁止するルールを策定する方針を明らかにした。副委員長はイノベーションや経済成長の基盤となる自由でオープンなインターネット環境を保証するため、合法的なサービスの利用を妨げる反競争的な商慣行を規制する必要があると強調した。

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米国では2000年代半ばからネット上のトラフィック管理をめぐってネット中立性の議論が高まり、2010年12月にインターネット接続業者(ISP)に対して不当な差別によるコンテンツやアプリケーションの遮断を禁じる一方、効果的なネットワーク管理を認めることを柱とするルールが策定された。欧州でもスマートフォンの普及などを背景にネット上のトラフィックが急増しており、インフラ利用とコスト負担の公平性をめぐる議論が本格化している。欧州委は従来、ブロードバンド網を保有する事業者に対してネットワークの開放を義務づけることで公正な競争を確保できるとの立場だったが、トラフィックがひっ迫するなか、大手通信会社がIP電話の「スカイプ」やグループチャットサービス「WhatsApp」など、自社と競合するサービスの利用を制限している実態が明らかになり、ネットの中立性原則を法制化すべきだとの声が高まっている。

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EU加盟国の通信監督当局が2011年に行った調査によると、固定回線では5人に1人、移動体通信では3人に1人以上が特定のサービスへのアクセスを阻止したり、通信速度を落とすなどの対応を経験しており、欧州委はEU域内で推定1億人が何らかのアクセス制限を受けているとみている。ISP事業者は増え続けるトラフィックを効果的に管理するために必要な措置と主張しているが、クルース副委員長は演説で、大手通信会社などが自社の優位性を保つため、IP電話など競合するサービスの利用を制限していると批判。「反競争的なアクセス制限を排除するとともに、トラフィック管理を目的とする場合も利用者への周知を徹底するなど、透明性が確保されなければならない」と述べ、法的拘束力を持つ勧告または規則の形でネット中立性に関するルールづくりを進める意向を表明した。

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