2013/7/29

総合 –EUウオッチャー

EU離脱より残留が経済面でメリット、英政府が報告書を公表

この記事の要約

英政府は22日、英国にとってEUから離脱して独自政策を進めるよりも、EU内に留まる方が経済面のメリットが大きいとする報告書をまとめた。EU離脱をめぐる議論が活発化するなか、英国に有利な加盟条件を引き出したうえでEU残留を […]

英政府は22日、英国にとってEUから離脱して独自政策を進めるよりも、EU内に留まる方が経済面のメリットが大きいとする報告書をまとめた。EU離脱をめぐる議論が活発化するなか、英国に有利な加盟条件を引き出したうえでEU残留を目指したいキャメロン首相にとって、早期離脱を唱える保守党内の強硬派を懐柔するうえで有効な材料となりそうだ。

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英国では伝統的にEU懐疑論が根強く、ユーロ危機が深刻化した2011年以降の世論調査では常にEU離脱派が残留派を上回っている。こうしたなかキャメロン首相は今年1月、2015年の次期総選挙で保守党が勝利した場合、EUとの間で英国の加盟条件について再交渉したうえで、17年末までにEU残留の是非を問う国民投票を行うと表明。再交渉の開始に向け、経済、税制、移民政策、教育、医療など32の分野についてEUとの関係が英国に及ぼす影響について詳細な分析を指示していた。今回は第1弾として、税制、市場アクセス、外交など6分野の影響分析をまとめた報告書が公表された。

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まず市場アクセスに関しては、人口5億人の単一市場に留まることで英国経済は(EUを離脱するより)「明らかに拡大する」と指摘。その一方、EUの広範な規制と自国の政策決定権が制限される点をマイナス要因として挙げた。報告書はEU残留がもたらす具体的な経済効果を算出していないが、外部機関がまとめた6件の研究データを引用しており、これによると5件は最大6.5%のGDP押し上げ効果があるとする一方、1件はGDPを3%押し下げると分析している。報告書はそのうえで、「経済と政策面でそれぞれメリットとデメリットがあり、単純に答えを導くことはできないが、報告書の作成にあたって得られた情報やデータを全体としてみると、EU残留を肯定的に捉えることができる」と結論づけている。

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政府の報道官は、キャメロン首相への圧力を強めている党内の反EU派の批判をかわすため、議会休会中のタイミングを狙って報告書を公表したとの批判を一蹴。EU離脱か残留かを決定することではなく、EUとの関係が英国にもたらす影響をできるだけ正確に分析して議論の土台つくることが報告書の目的と強調し、来年末までにさらに32本の報告書をまとめる方針を示した。

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