欧州委員会は25日、光ファイバー並みの通信速度でデータ通信が可能な第4世代移動通信システム(4G)の普及状況に関するリポートを公表した。米国では4Gネットワークの人口カバー率が90%を超えているのに対し、EU諸国ではこの割合が25%にとどまっており、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴うデータ通信量の急激な増加に対応するための取り組みで大きく後れを取っている現状が浮き彫りになった。
\リポートによると、EU加盟国のうちドイツ、エストニア、スウェーデンでは4Gサービスの普及が比較的進んでいるものの、アイルランド、キプロス、マルタでは現時点で4Gネットワークがまったく整備されていない。また、いずれの国でも農村部ではほとんど4Gネットワークが整備されておらず、全世界における4Gサービスの加入者に占めるEU市民の割合は5%程度にとどまっている。
\一方、4Gネットワーク用周波数帯のライセンス料金をみると、加盟国間で50倍の開きがあり、米国との比較ではEUが平均4倍と高くなっている。このため、ライセンスを取得したもののネットワーク整備に必要な資金を確保できないケースも想定され、リポートは事業計画の遅れがEU各国の経済政策に悪影響を及ぼす可能性を指摘している。
\欧州委のクルース副委員長(デジタルアジェンダ担当)は「私個人も、ブリュッセルにいながら携帯電話がまともに使えない状態にフラストレーションを感じている。世界のモバイルトラフィックは年66%のペースで拡大すると予測されるなか、EUは通信網崩壊の瀬戸際に立たされている。4Gネットワーク向けに周波数の開放を早急に進めなければ取り返しのつかないことになる」と警告。次世代モバイル通信サービスが経済成長のけん引役である情報通信産業の核になると指摘し、すべての加盟国がEUの決定に従い、2014年6月末までに3G回線用の周波数帯のうち120MHz帯を4G回線に開放しなければならないと強調した。
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