2013/9/16

産業・貿易

銀行監督一元化を欧州議会が可決、破綻処理が次の焦点に

この記事の要約

ユーロ圏の大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する法案が12日、欧州議会の本会議で可決された。これによって、「銀行同盟」創設の第1段階となる銀行監督一元化が2014年9月に実現することが決定。今後は銀行破綻処理 […]

ユーロ圏の大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する法案が12日、欧州議会の本会議で可決された。これによって、「銀行同盟」創設の第1段階となる銀行監督一元化が2014年9月に実現することが決定。今後は銀行破綻処理の一元化に焦点が移る。

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銀行同盟の創設は、ギリシャに端を発した信用不安への対応が後手に回り、債務危機の拡大を招いた反省を踏まえて、EUが昨年に打ち出した構想。第1弾となる銀行監督の一元化は、2012年6月の首脳会議で合意していた。

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銀行監督の一元化によって、ユーロ圏の資産総額が300億ユーロを超えるか、本国の国内総生産(GDP)の20%以上を占める大手銀行がECBの直接監督下に置かれる。その他の中小銀行は引き続き各国当局が監督するが、必要に応じてECBが介入する権限を持つ。債務危機に直面するユーロ参加国に金融支援を行う「欧州安定メカニズム(ESM)」に支援を要請した銀行も、ECBの監督下に入る。

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監督の一元化はユーロ圏が対象だが、非ユーロ参加国も希望すれば参加できる。英国、スウェーデンは加わらない方針を示している。

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EU加盟国と欧州議会は今年3月、銀行監督一元化について合意したが、欧州議会での採決は遅れていた。各国の当局が握っていた銀行監督権がECBに集中すると、監督行政の透明性に問題が生じるとして、欧州議会側が対応を求めたためだ。これに関してECBと欧州議会の代表は11日に協議し、◇ECB内に設置される「監督委員会」が議事録の概要を公開する◇監督委員長が定期的に欧州議会の公聴会に出席する◇監督委員会の委員長、副委員長の人選に欧州議会も関与する――ことで合意。これを受けて欧州議会は本会議で、同法案を賛成559、反対62、棄権18の圧倒的多数で採択した。

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銀行同盟は(1)銀行監督の一元化(2)銀行破綻処理の一元化(3)預金保険制度の一本化――の3段階で実施される。銀行監督一元化の実現が正式決定したことで、破綻処理一元化が次のステップとなる。これをめぐっては、前段階となる各国が主体となって進める処理手続きに関する共通ルールについて6月に合意。本丸となる破綻処理を統括機関に一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度の具体案を欧州委員会が7月に発表した。

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欧州委の案は、ECB、欧州委の代表と対象国の当局者で構成される破綻処理を統括する「破綻処理委員会」を設立し、ECBが監督対象となる銀行の中で問題が浮上した場合に、処理について協議するが、最終決定権は欧州委が握るという内容。

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これについては、欧州委がこのような強力な権限を持つのはEU基本条約から逸脱するもので、条約改定が必要になるとしてドイツ、英国などが反発している。13、14日に13日にリトアニアの首都ビリニュスで開かれたEU財務相会合で協議されたが、ドイツなどが主張を譲らず、結論に至らなかった。

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欧州委は2015年1月の破綻処理委員会始動を目指している。その実現には、欧州議会が選挙モードに突入する14年4月までに法案を成立される必要がある。このため加盟国の合意は、12月がタイムリミットとなる。

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ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は14日、カギを握るドイツのメルケル首相が総選挙を前に譲歩することはできないことから、9月22日の総選挙が終了してから、改めて協議することになるとの見通しを示した。

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