2013/11/4

総合 –EUウオッチャー

盗聴問題で欧州議会メンバーが訪米、ドイツも独自に調査団派遣

この記事の要約

米情報機関による通信傍受問題について米政府に事情説明を求めるため、欧州議会の代表が10月28日、ワシントン入りした。これまでに米議会の代表や国務省高官などと会談し、米国家安全保障局(NSA)が欧州で展開している情報収集活 […]

米情報機関による通信傍受問題について米政府に事情説明を求めるため、欧州議会の代表が10月28日、ワシントン入りした。これまでに米議会の代表や国務省高官などと会談し、米国家安全保障局(NSA)が欧州で展開している情報収集活動について意見交換した。一方、ドイツもメルケル首相に対する盗聴問題を受けて独自に調査団をワシントンに派遣し、30日にライス大統領補佐官(国家安全保障担当)ら政府高官とホワイトハウスで協議した。

\

米当局による欧州での情報収集活動をめぐっては、NSAがメルケル首相の携帯電話を盗聴していた疑惑が浮上しているほか、フランス、イタリア、スペインでもNSAが数千万件に上る一般市民の通話を傍受していたと報じられた。さらに米紙ワシントン・ポストは30日、NSAの職員が米グーグルとヤフーが世界各地に設置しているデータセンターを結ぶ通信回線に侵入し、個人ユーザーのアカウントから電子メールや音声・動画ファイルなどを無断で入手していると報じた。同紙が入手した極秘文書によると、この情報収集活動は「MUSCULAR」と呼ばれ、英政府通信本部(GCHQ)と共同で運営されている。NSAは今年1月初旬までの1カ月に1億8,000万件以上の情報を入手したという。

\

こうしたなかでクラッパー国家情報長官は29日、下院情報特別委員会の公聴会で証言し、NSAがメルケル首相を含む外国の指導者35人の通話などを盗聴していたとされる問題について、同盟国を含む外国の首脳に対する情報収集活動を長年にわたって行ってきたことを認めた。一方、NSAのアレクサンダー長官は同日の公聴会で、NSAがフランス、イタリア、スペインで一般市民を対象に大規模な盗聴を行っていたとされる問題について、報道機関の「完全な誤解」と反論。米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者が暴露した情報の一部は「外国の情報機関からNSAに提供されたもの」で、「防衛および軍事支援のため北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が中心となって集めたものだ」と述べた。同長官はさらに、スノーデン容疑者と報道機関はNSAと外国情報機関の協力関係を知らなかったため、誤った報道が流れたと指摘した。

\

欧州議会外務委員会のブロク委員長は30日、訪問先のワシントンで会見し、フランスなどで浮上した盗聴疑惑について「フランス、スペイン、あるいはドイツの情報機関が、アフガニスタンやイエメン情勢に関する情報分析の一環として集めた通話記録を米側に提供した証拠が米側から示された」と説明。そのうえで、アレクサンダー長官は議員団に対し、NSAやその他の米機関が欧州で当事国に知らせず、「一方的に」情報収集活動を行っていることを認めたことを明らかにし、「米国との間で信頼関係を再構築するには多大な努力が必要になる」と述べた。

\