2013/11/11

環境・通信・その他

加盟国が排出枠入札の一部延期で合意、欧州議会・欧州委とルールを協議

この記事の要約

EU加盟国は8日開いた大使級会合で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想について協議し、実施に向けたルール作りを進めることで合 […]

EU加盟国は8日開いた大使級会合で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想について協議し、実施に向けたルール作りを進めることで合意した。議長国を務めるリトアニアが欧州議会および欧州委員会との交渉にあたり、数週間以内の基本合意を目指す。

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EU-ETSでは第3期間がスタートした今年から段階的にオークションによる排出枠の有償割当を拡大し、27年までに全面移行することが決まっている。しかし、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格は今年に入り1トン当たり5ユーロを下回る水準で推移している。企業に環境投資を促すには最低でも20ユーロ前後の排出権価格を維持する必要があるとされるが、今後5年以内に排出権価格が15ユーロを超えることはないといった試算もある。

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欧州委は昨年7月、排出枠の需給改善を図って排出権価格を下支えするため、13-15年に有償配分する約35億トンの排出枠うち、9億トン分の入札時期を16年以降に先送りする計画を打ち出した。欧州議会は今年7月、欧州委の提案に一部修正を加えたうえでバックローディング構想を承認したが、一部の加盟国は排出権価格が上昇すれば企業に重い負担を強いることになるとして入札延期に反対していた。

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欧米メディアがEU関係者の話として報じたところによると、大使級会合ではポーランドとキプロスがバックローディングに反対を表明したが、連立協議などの国内事情でこれまで態度を保留していたドイツとスペインが賛成票を投じ、実施に向けて議長国に交渉権限を付与することで合意が成立した。今後のプロセスとしては、リトアニア、欧州議会、欧州委の3者協議でバックローディングの実施に関する法案をまとめ、欧州議会と閣僚理事会で承認手続きを行う。欧州議会環境委員会のグルート委員長は「加盟国は今回、欧州議会が7月に可決した修正案をそのままの形で承認しており、最終的な意見調整にさほど時間はかからないと考えている。12月9~12日に予定される欧州議会本会議での採択を目指す」と述べている。

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