欧州委員会は13日、ドイツの経常黒字が欧州経済の安定を阻害する要因になっている可能性があるため、同国に対する調査を開始すると発表した。EUは域内の経済均衡を保つため、経常黒字を国内総生産(GDP)比で6%以内に抑えるよう加盟国に求めているが、ドイツは2007年以降、連続して上限を上回っている。欧州委は今後3~4カ月程度かけて調査を行う見通しで、過剰な経常黒字が欧州経済に悪影響を及ぼしていると判断した場合は是正を勧告することになる。
\財政危機で欧州経済が低迷するなか、ドイツはユーロ安と低金利を武器に中国などへの輸出を伸ばし、経済成長を維持してきた。欧州委は同日まとめたEU域内の経済不均衡に関する報告書の中で、ドイツ国内では「貯蓄が投資を上回っている」と指摘。経常黒字を国内への投資に回すとともに、内需を拡大することで競争力の低い他のEU諸国からのドイツへの輸出が増え、域内の不均衡を是正することができるとの見解を示した。
\ドイツをめぐっては、米財務省が10月末にまとめた為替報告書で、輸出依存型の経済構造が世界経済に悪影響を及ぼしているとの認識を示し、内需拡大に向けた取り組みを求めた。ドイツ政府はこれに対し、経常黒字は高い生産性を追求して競争力を高めてきた努力の結果であり、高品質のドイツ製品に対する世界的な信頼の表れなどと主張。経常黒字はドイツおよびユーロ圏経済にとって懸念材料ではないと反論した。しかし、国際通貨基金(IMF)首脳がこうしたドイツ側の主張に異議を唱え、ドイツの黒字が縮小しない限り、ギリシャをはじめとする他のユーロ圏諸国の赤字が減ることはないと指摘。賃上げや国内での投資促進を通じて内需をバランスの取れたものにする必要があるとの認識を示し、「適切な水準」に黒字を縮小するようメルケル政権に呼びかけた。
\欧州委のバローゾ委員長は「経常黒字が必ずしも不均衡を意味するわけではない」としたうえで、「詳しく現状を分析し、高水準の黒字が欧州経済全体にどのような影響を及ぼしているか理解する必要がある」と説明。ドイツ側は欧州委の意図を正確に理解し、調査結果に基づいて適切な措置を講じるだろうと述べた。ユーロ圏加盟国が域内の経済不均衡是正のための手続きに基づく欧州委の勧告に従わず、適切に対応をとらない場合、GDPの0.1%に相当する制裁金の支払いを命じられる可能性がある。
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