欧州委員会が10月に発表したEU域内の空港を発着する航空機を対象とする温室効果ガス排出規制の見直し案をめぐり、欧州議会のペーター・リーゼ議員は20日、月内に修正案を提案する方針を明らかにした。2020年まで欧州空域外の飛行分を規制の対象外とする欧州委案に対し、猶予措置を16年までに短縮するという内容。航空会社に対する排出規制をめぐっては、域外国だけでなく、欧州の航空業界からも反対の声が上がっているが、リーゼ議員は域内での合意形成が遅れれば深刻な通商紛争を招きかねないと警告している。
\EUは航空機から排出される温室効果ガスを抑制するため、08年に航空部門をEU-ETSに組み込む方針を決定。11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制を適用し、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象を拡大した。しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。このため欧州委は昨年11月、域内と域外を結ぶ国際線の航空機への規制の適用を1年間、凍結する方針を打ち出し、この間に国際民間航空機関(ICAO)の主導で航空機の排出規制に関する国際的な合意をまとめるよう強く求め、合意形成に至らなければEU独自の規制を再開すると警告していた。
\10月初めに開かれたICAOの総会では、20年までに国際的な規制の枠組みを導入することで各国が合意。ICAO理事会で「市場メカニズムに基づく」規制について検討を進め、16年の次回総会で具体的な内容を決定する方針を確認した。欧州委はこれを受け、14-20年まで欧州空域内の飛行分に限定してEU排出量取引制度(EU-ETS)を適用する案を打ち出した。欧州経済領域(EEA)を結ぶ路線は従来通り、全行程が排出枠取引の対象となるが、域外の都市と域内を結ぶ路線に関しては、EEAの領空を飛行する分のみに規制を適用するという内容で、たとえば東京とEU内の都市を結ぶ路線の場合、アジアやロシア上空などの飛行で排出された温室効果ガスは排出量取引の対象から除外される。
\リーゼ議員はポーランドで23日まで開催された国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で記者団の取材に応じ、「総論では欧州委の提案に賛成だが、域外の航空会社に20年まで猶予期間を与える必要はないと考えている。ICAOは16年に国際的な規制の枠組みを決定すると確約しており、そうならなかった場合は当初の計画通り、EU内を発着する便の全行程を規制の対象にすべきだ」と発言。欧州委の提案を一部修正した上で、来年3月または4月に予定される欧州議会本会議での採択を目指す方針を示した。
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