欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/17

EUその他

カルテル被害者の権利保護法案、加盟国が承認

この記事の要約

EU加盟国は10日に開いた農業漁業理事会で、カルテルなど反競争的行為によって損害を受けた域内の企業・個人の保護を強化する法案(EU指令案)を採択した。損害賠償請求訴訟を起こしやすくすることを柱とする内容で、欧州議会が月内 […]

EU加盟国は10日に開いた農業漁業理事会で、カルテルなど反競争的行為によって損害を受けた域内の企業・個人の保護を強化する法案(EU指令案)を採択した。損害賠償請求訴訟を起こしやすくすることを柱とする内容で、欧州議会が月内に承認し、成立する見通しだ。

EUではドイツ、フランス、英国、イタリアなど多くの国で、企業の価格カルテルなどで不利益を被った企業や消費者が損害賠償請求訴訟を起こすことが認められている。しかし、被害の立証、損害額の算定が難しいことや、加盟国によって訴訟のルールや手続きが異なることが障害となり、立場の弱い中小企業や消費者が泣き寝入りしているのが実情。欧州委員会によると、2005年から12年にかけてEU競争法違反で制裁が科された案件で、損害賠償訴訟に至ったのは25%にとどまっている。

こうした状況を憂慮する欧州委は、EU共通のルールを定め、訴訟のハードルを低くする必要があると判断。指令案が2013年6月に発表され、今年4月に欧州議会の第一読会を通過していた。

採択された指令案では、カルテルが域内の複数国にまたがるケースが多いことを考慮し、ある国の裁判所が違法と認定した行為は、他の加盟国で起こされた訴訟でも自動的に違法と認定され、原告側の違法性立証責任が免除される。このほか◇各国の裁判所は損害賠償訴訟に際して、訴えられた企業に証拠開示を命じる権限を持つ◇訴訟を起こす期限は、加盟国の競争当局が違法行為を認定してから少なくとも1年とする◇違反行為が価格上昇を招き、その影響がサプライチェーンに及んだ場合、最終的に損害を被ったすべての被害者が損害賠償を請求できる仕組みを導入する――などが盛り込まれた。

欧州議会は月内に開く本会議で同指令案の採決を行うが、加盟国が採択した案は修正が施されていないことから、承認は確実な情勢。加盟国は指令案が正式成立してから2年以内に必要な国内法の整備を終えることを求められる。