欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/1

EU産業・貿易

欧州議会がネット企業に検索事業分離求める決議、グーグル対応で欧州委に圧力

この記事の要約

欧州議会は11月27日の本会議で、米グーグルなどインターネット企業に検索事業の分離を求める内容の決議案を賛成多数で採択した。決議は法的拘束力を持たず、実際の政策に反映される可能性は低いが、欧州委員会はグーグルが検索市場で […]

欧州議会は11月27日の本会議で、米グーグルなどインターネット企業に検索事業の分離を求める内容の決議案を賛成多数で採択した。決議は法的拘束力を持たず、実際の政策に反映される可能性は低いが、欧州委員会はグーグルが検索市場で独占的地位を乱用している恐れがあるとして調査を進めており、同委に対し厳しい姿勢で臨むよう圧力をかける狙いがある。

欧州委はグーグルが独占的地位を乱用し、ネット検索機能で自社関連のサービスをライバル社よりも優先的に表示していると主張する競合他社からの訴えを受け、2010年11月に調査を開始した。グーグルは巨額の制裁金を回避するため、昨年末までに3回にわたり欧州委に改善策を提示。欧州委はこれを受け、一旦はグーグルの提案を受け入れて調査を打ち切る方針を固めたが、マイクロソフトをはじめとする競合他社から苦情が寄せられ、和解を見送った経緯がある。

決議はグーグルを名指しこそしていないが、同社が90%以上のシェアを占める欧州検索市場で公正な競争が阻害されていると指摘。欧州委に「インターネット企業の検索エンジン事業を他のサービスから分離する案」について検討するよう求めている。決議案をまとめたシュワブ議員は今回の動きについて、「欧州委に対する政治的シグナル」と形容。自身はグーグルのサービスを利用しており、同社に対してなんら反感は持っていないと述べたうえで、「いかなる市場であれ、独占は消費者にとっても企業にとっても有益なものではない」と指摘した。

ただ、欧州議会の内部では、「グーグルのライバル企業による強力なロビー活動に触発された、保護貿易主義的な提案に議会が関わるべきではない」(中道・リベラル派の議員)といった批判的な意見も出ている。また、欧州委のエッティンガー委員(デジタル経済・社会担当)は「決議は欧州議会の重要な意見表明だが、実際に分社化が実現するとは思わない」とコメントしている。

一方、ロイター通信などによると、仏独政府は欧州委に共同で書簡を送り、競争法の枠組みが現状に即したものになっているか検証するよう要請した。ドイツのマハニッヒ副財務相は会見で「急速なデジタル化に伴い、伝統的な競争法では十分に対応できなくなっている。既存の競争ルールと電気通信分野の規制によってインターネット市場で公正な競争が保障されるかどうか、徹底的に検証するよう欧州委に要請した」と説明。ルメール仏デジタル担当相は「現行の枠組みで独占的地位の乱用に対応できるかどうかが問題だ。巨大インターネット企業の商慣行を確実にターゲットにできるよう、規制の枠組みを見直す必要がある」と付け加えた。