欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/7

EUその他

国際線への航空排出規制適用は17年から、欧州議会が法案採択

この記事の要約

欧州議会は3日の本会議で、航空部門に対する温室効果ガス排出規制について、2016年末まではEU域内を結ぶ路線のみ排出量取引制度(EU-ETS)の対象とする案を賛成多数で可決した。17年以降は国際線を含め、域内の空港を発着 […]

欧州議会は3日の本会議で、航空部門に対する温室効果ガス排出規制について、2016年末まではEU域内を結ぶ路線のみ排出量取引制度(EU-ETS)の対象とする案を賛成多数で可決した。17年以降は国際線を含め、域内の空港を発着するすべての便に同制度が適用される。今後、EU閣僚理事会で規制案について検討する。

EUは航空機から排出される温室効果ガスを抑制するため、2008年に航空部門をEU-ETSに組み込む方針を決定。11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制を適用し、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象を拡大した。しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。このため欧州委は12年11月、域内と域外を結ぶ国際線の航空機への規制の適用を一時凍結する方針を打ち出し、国際民間航空機関(ICAO)の主導で航空機の排出規制に関する国際的な合意をまとめるよう要求した。

昨年10月に開かれたICAO総会では、20年までに国際的な規制の枠組みを導入することで各国が合意し、16年に開かれる次回総会で具体的な内容を決定する方針を確認した。欧州委はこれを受けて、14~20年まで欧州空域内の飛行分に限定してEU-ETSを適用する案を打ち出した。欧州経済領域(EEA)を結ぶ路線は従来通り、全行程が排出量取引の対象となるが、域外の都市と域内を結ぶ路線に関しては、EEAの領空を飛行する分のみに規制を適用するという内容で、たとえば東京とEU内の都市を結ぶ路線の場合、アジアやロシア上空などの飛行で排出された温室効果ガスは排出量取引の対象から除外される。EU加盟国はこれに対し、域外国との摩擦を回避するため、国際線への規制の適用を見送るべきだと主張している。

欧州議会の環境委員会は1月、EEA空域外の飛行に対する適用除外の期間を4年短縮し、16年までとする修正案を採択。その後、加盟国と欧州議会の交渉で、16年末まで国際線を規制の対象外とする妥協案が成立し、本会議で承認された。最終案をまとめたペーター・リーゼ欧州議員は「欧州空域外の飛行に対する適用除外を20年までとする加盟国の主張を受け入れることはできない。16年のICAO総会で国際的な合意に至らなかった場合、さらに4年後まで適用除外を維持する正当性はどこにもない」としている。