欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/2

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャで反緊縮派の新政権発足、EUとの財政再建見直し協議が焦点に

この記事の要約

ギリシャで1月26日、総選挙で勝利した急進左派連合(SYRIZA)のチプラス党首が首相に就任し、反財政緊縮派の政権が誕生した。新政権はEUなどに約束した財政再建計画の見直し、債務削減などを求める方針で、EUとの協議が今後 […]

ギリシャで1月26日、総選挙で勝利した急進左派連合(SYRIZA)のチプラス党首が首相に就任し、反財政緊縮派の政権が誕生した。新政権はEUなどに約束した財政再建計画の見直し、債務削減などを求める方針で、EUとの協議が今後の大きな焦点となる。しかし、EUは債務返済期限の延長には応じる姿勢をちらつかせているものの、債務削減は認めず、合意した財政再建の順守も譲らない構えで、対立が深まりそうな雲行きだ。

急進左派連合は25日に投開票された総選挙で圧勝し、議会(定数300)で149議席を確保した。過半数に2議席足りなかったため、13議席を獲得した右派政党「独立ギリシャ人」と同日に連立で合意し、続いてチプラス党首が首相に就任。27日に組閣を終え、新政権が発足した。焦点の財務相には反緊縮派として知られる経済学者のバロファキス議員(急進左派連合所属)を起用した。

急進左派連合はギリシャが債務危機に際してEU、国際通貨基金(IMF)から総額2,400億ユーロの緊急金融支援を受けた見返りとして約束した財政緊縮の放棄を公約に掲げて選挙戦に臨み、緊縮策に反発する国民の支持を得た。具体的には年金、最低賃金の引き上げ、公務員の削減中止、国営資産売却の凍結などを打ち出している。要するに「ばらまき政策」だ。さらに債務削減を取り付けることも目指すとしている。

チプラス新首相は、一方的にEUとの合意を破棄し、財政再建を後退させるという当初の方針から態度をやや軟化させ、ユーロ圏にとどまりながら、EUとの交渉で要求の実現を目指す姿勢を示している。

しかし、EUは要求の受け入れに否定的で、26日に開かれたユーロ圏財務相会合では合意順守を求める声が相次いだ。同会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は記者会見で、「ユーロ圏にとどまることは、合意した事項を全面的に履行することを意味する」と発言。ギリシャが財政再建路線を継続することを条件に債務返済期限の延長、利払い減免には応じる用意があることを示唆しながらも、債務の元本削減に関しては「ユーロ圏で多くの支持を取り付けることはできないだろう」と一蹴した。

また、デイセルブルム議長は30日にギリシャを訪問してチプラス首相、バロファキス財務相と会談したが、双方の主張をぶつけ合っただけに終わり、進展はなかった。

ギリシャはEUの支援から昨年末に脱却し、支援終了後に自力での資金調達が難しくなる場合に備えた予防的融資枠をEUが設定することになっていた。しかし、最後の18億ユーロの支援実施の条件となる財政再建策をめぐる協議が紛糾したため、支援期限が2月まで延長された。

ギリシャは支援終了に伴ってEUの財政監視から外れることになるが、すでに合意した財政再建計画は実行する義務を負う。また、欧州中央銀行(ECB)が3月に開始するユーロ圏の国債買い取りの対象となるためには、引き続き財政監視を受けることが条件となっている。新政権は支援を脱却しながらも財政監視下に置かれず、合意に反して緊縮路線から転換し、しかも債務返済期限の延長などを取り付け、さらにECBによる国債買い取りを認めさせるという無理難題をEUに突きつける格好で、「満額回答」は到底望めない。このため、チプラス首相は何らかの妥協点を模索せざるを得ないとの見方が出ている。