欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/2

総合 – 欧州経済ニュース

欧州委が仏への財政規律制裁見送り、赤字是正期限を2年延長

この記事の要約

欧州委員会は2月25日、EUの財政規律に違反する状況が続くフランスに対して、現時点での制裁発動を見送り、赤字是正期限の2年延長を認めることを決めたと発表した。ただし、フランスは4月までに財政改善計画を提出することを求めら […]

欧州委員会は2月25日、EUの財政規律に違反する状況が続くフランスに対して、現時点での制裁発動を見送り、赤字是正期限の2年延長を認めることを決めたと発表した。ただし、フランスは4月までに財政改善計画を提出することを求められる。

EUはギリシャを発端とする債務危機がユーロ圏を大きく揺るがした反省を踏まえ、財政監視強化策としてユーロ参加国の毎年の予算案を欧州委が事前審査する制度を2013年に導入。昨年11月に発表された15年予算案の審査結果ではフランス、イタリア、ベルギーが問題視され、欧州委が3月初めまでに制裁発動の是非を判断することになっていた。

EUの財政規律では、各国は単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けられているが、フランスは08年から違反が続いている。しかも、2度にわたって赤字是正期限の延長を取り付け、直近では13年となっていた期限を15年まで延長されたが、15年の赤字はGDP比4.1%と、規律を順守できないことが確実な情勢だ。

欧州委は同国が財政、構造改革を強化する必要があるとしながらも、政府が先ごろ新たな財政再建策を発表したことから、「正しい方向に進んでいる」(モスコビシ経済・金融担当委員)として、制裁見送りと赤字是正期限の2年延長を勧告した。

EUは財政規律の違反が続く国にGDPの0.5%に相当する制裁金を科すことになっているが、これまで該当するケースに制裁を発動したことはなく、同ルールの形骸化が問題視されている。規律軽視が目立つフランスを今回も見逃したことについても、EUの大国である同国への制裁が大きな波紋を広げることから、欧州委が発動に踏み切れなかったとの見方が多い。

ただ、モスコビシ委員は、フランスが17年に赤字をGDP比3%以下に抑えるため、今年はGDP比0.5%相当の構造赤字の縮小を求めたほか、その達成に必要な財政改善措置を4月までに提出させ、それを5月に検証することを強調。同措置が不十分と判断すれば、制裁発動の可能性があるとしている。

さらに、欧州委は27日、フランスの財政赤字削減について、15年にGDP比4%、16年に3.4%、17年に2.8%まで縮小するという新目標を設定。15、16年に関しては、仏政府が12月に示した目標の4.1%、3.6%と比べて厳しい削減を求めた。

一方、欧州委はイタリアとベルギーに関しては、財政改善が十分に進んでいるとして新たな是正措置は求めず、過剰赤字是正手続きの適用対象から除外することを決めた。