欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/4

EU産業・貿易

欧州委、電力容量メカニズムの実態調査を開始

この記事の要約

欧州委員会は4月29日、中長期的な電力供給力を確保するための「容量メカニズム」をめぐって、11のEU加盟国で実態調査を開始したと発表した。容量メカニズムによって、単一市場の競争を歪めることなく電力の十分な供給が確保される […]

欧州委員会は4月29日、中長期的な電力供給力を確保するための「容量メカニズム」をめぐって、11のEU加盟国で実態調査を開始したと発表した。容量メカニズムによって、単一市場の競争を歪めることなく電力の十分な供給が確保されるのかを見極めるのが狙い。

自由化された電力市場においては、競争を促進しながら中長期の電力供給力を確保するシステムを構築していくことが極めて重要な課題となる。このため一部の加盟国は、発電事業者に電源投資のための何らかのインセンティブを与え、そのコストを全需要家が電気料金を通して広く負担する容量メカニズムを導入し、あるいは導入を検討している。欧州委は電力を安定的に供給するためにこうしたメカニズムを導入することが正当化される状況もあることを認めたうえで、特定の事業者が過度に優遇されたり、加盟国間の電力の融通が阻害されたりすることがないよう配慮する必要があるとしている。

今回実施される実態調査は、ベルギー、デンマーク、クロアチア、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデンの11カ国の規制当局や電力市場参加者を対象としている。欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は調査について、「各加盟国に対して容量メカニズムを実施するにあたって国家補助に関するルールを尊重するよう明確なシグナルを送るものであり、欧州委が目標とするエネルギー同盟の実現に貢献するものであるかどうかを明らかにするのが目的だ」と説明している。15年末までに中間報告をまとめ、来年半ばには最終報告書を発表する計画だ。