欧州の石油大手6社は1日、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局などに書簡を送り、温室効果ガスの排出削減を図るため、世界規模で炭素価格制度(carbon pricing system)の導入を進めるよう各国政府に呼びかけた。二酸化炭素(CO2)の排出自体に気候変動コストを転嫁することで、化石燃料の使用を減らす一方、温室効果ガス排出量の少ない天然ガスなどの生産を拡大し、エネルギー需要の増大に対応することが可能と主張している。
共同で声明を出したのは、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル、英BP、BGグループ、仏トタル、伊ENI、ノルウェーのスタトイルの6社。エクソンモービルやシェブロンなど米企業は加わっていない。
6社はまず、温室効果ガス排出量が現在のレベルで推移した場合、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えるという国連の目標を達成することは「極めて困難」との現状認識を示したうえで、エネルギー業界はCO2排出量を削減しながら世界的な需要の拡大に応えなければならず、「こうした難しい課題に対応するため、相応の役目を果たす用意がある」と強調。「炭素価格制度が将来に向けた不確実性を減らし、低炭素技術への投資促進につながると確信している」として、世界的規模で炭素価格制度の導入を進め、最終的に国や地域単位のアプローチを結びつける国際的な枠組みを構築する必要があると訴えている。
トタルのプヤンヌ最高経営責任者(CEO)は会見で、石炭火力発電をCO2排出量が約半分の液化天然ガス(LNG)による発電に移行するには、炭素価格を現在の1トン当たり7ドル台から40ドル程度まで引き上げる必要があり、さらにCO2の回収・貯蔵(CCS)技術への投資を促すには80~100ドルが必要と説明した。
世界銀行によると、現在40の国・地域と20の自治体が炭素税または排出量取引制度を導入しており、こうしたアプローチによる炭素市場の規模はCO2換算で約70億トンと、世界の年間の温室効果ガス排出量の約12%を占めている。