ギリシャの金融支援問題をめぐる交渉が行き詰まっている。ギリシャ政府はEUによる支援再開の条件となる財政再建策について新たな案を提示したが、EUなど債権者側は不十分としており、14日に行われた協議は物別れに終わった。交渉の期限が近づく中、ユーロ圏はギリシャのデフォルト(債務不履行)に備えた対応を協議し始めた。
EUはギリシャに現行金融支援に基づく最後の融資(72億ユーロ)を実行する条件として厳しい財政緊縮策の継続を求めているが、1月に発足したギリシャの新政権が抵抗し、協議は難航している。債権者である欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は3日、財政黒字の目標を引き下げる妥協案を提示したものの、年金削減や電気代などの付加価値税(VAT)増税など焦点の分野で譲らなかったことから、ギリシャ側は一蹴していた。
現行支援が期限を迎える6月末までに合意できなければ融資を受ける資格を失い、債務返済に行き詰まるギリシャ側は9日、欧州委とECB、IMFに新提案を出した。詳細は不明だが、財政黒字の新目標を示しただけで、EU側が本丸とする年金削減などには触れていないと報じられている。このため、チプラス首相は10日に独メルケル首相、仏オランド大統領、11日に欧州委のユンケル委員長と会談したものの、目立った進展はなかった。14日にはブリュッセルのEU本部でギリシャと債権者側の代表による協議が行われたが、主要な改革をめぐる溝は埋まらず、合意に至らなかった。欧州委の報道官によると、財政改革の規模に関して、双方で年20億ユーロ相当の隔たりがあるという。
ギリシャはIMFへの15億ユーロの債務を月末までに返済しなければならない。さらに7月20日に35億ユーロの国債の償還期限を迎える。72億ユーロの融資を受けることができなければ、これらの債務が不履行となるため、合意に向けた交渉の時間は限られている。ギリシャは今月18日に開かれるユーロ圏財務相会合での打開を目指すが、年金削減の受け入れなど大幅な譲歩は国民、与党の猛反発を招き、政権が揺らぎかねないことから難しい状況で、デフォルトが現実味を増してきた。
AFP通信などによると、ユーロ圏はこうした状況を受けて、11日にスロバキアで開いた当局者協議で、最悪のシナリオとしてギリシャがデフォルトに陥る恐れがあることを確認。他に近日中の合意、金融支援の期限延長という2つのシナリオを想定しながらも、デフォルトを視野に入れた準備に着手したという。