欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/15

EU情報

欧州議会がTTIPに関する決議案の採決延期、ISD条項で調整つかず

この記事の要約

欧州議会は9日、EU・米間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)に対する欧州議会の立場をまとめた決議案について、10日に予定していた本会議での採決を延期した。投資家対国家の紛争解決(ISD)条項を中心に200件以上の修正 […]

欧州議会は9日、EU・米間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)に対する欧州議会の立場をまとめた決議案について、10日に予定していた本会議での採決を延期した。投資家対国家の紛争解決(ISD)条項を中心に200件以上の修正要求が提出されており、採決を行えば決議案は廃案になる可能性が高く、混乱が広がる恐れがあると判断した。

EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指し、2013年7月にTTIP交渉を開始した。これまで9回にわたり交渉会合が行われたが、ISD条項のほか食品・医薬品・自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって協議が難航している。

最大の焦点であるISD条項は海外で活動する企業にとってメリットがある反面、国家の規制権限が制限される側面もあるが、米国との交渉がスタートした当初はEU内で同条項を協定に盛り込むことに反対する意見はほとんど聞かれなかった。しかし、昨年5月の欧州議会選挙で自由貿易に反対の立場をとる極右勢力やEU懐疑派が躍進したことで風向きが変わり、ISD条項が導入された場合、農業、食品安全、環境など幅広い分野でEU側が譲歩を迫られ、結果的に消費者が不利益を被るといった懸念が広がっている。

こうしたなか、欧州議会国際貿易委員会は5月末、TTIP交渉の重点課題をまとめた勧告案を採択した。ISD条項に関しては、企業や団体などから完全に独立した仲裁人が常駐する新たな仲裁機関を設置することや、上訴制度の導入などを求める内容で、これを基にTTIPに対する欧州議会としての立場や交渉に際しての要求を盛り込んだ決議案が策定された。

AFP通信によると、採決に向け重要項目について主要会派間で妥協点を探る動きが本格化していたが、9日になって極左系のグループがISD条項の除外要求を提出したことで事態が急転。最終的にシュルツ議長が採決の延期を決めた。