欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/15

EU情報

EUとメキシコがFTA「近代化」に向け交渉開始へ、首脳会議で合意

この記事の要約

EUとメキシコは12日、ブリュッセルで首脳会議を開き、2000年に発効した自由貿易協定(FTA)を「近代化」させるための交渉を開始することで合意した。世界経済の現状に合わせて協定を深化させ、より一段の市場開放を実現して貿 […]

EUとメキシコは12日、ブリュッセルで首脳会議を開き、2000年に発効した自由貿易協定(FTA)を「近代化」させるための交渉を開始することで合意した。世界経済の現状に合わせて協定を深化させ、より一段の市場開放を実現して貿易と投資の拡大を図る。

メキシコはEUが中南米諸国と最初に締結したFTAの相手国で、すでにメキシコからEUに輸出されるすべての工業品の関税が撤廃される一方、EUの工業製品に対する関税も協定発効以前の最高35%から5%に引き下げられている。しかし、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)が頓挫するなか、EUは主要国・地域との貿易交渉を加速させており、カナダとは昨年9月、貿易自由化に加え、投資や知的財産権など広範な分野で経済協力関係の強化を目指す包括的経済貿易協定(CETA)の締結交渉を妥結。米国とも世界貿易の約3割を占める巨大な自由貿易圏の創設を目指して環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の締結交渉を進めている。

こうした動きを背景に、メキシコは米・加との関係を優先するEUに自国が軽視される事態を強く警戒している。一方、EUとしても新興市場のメキシコとの間でより高度な市場開放が実現すれば、サービス分野や公共調達などで欧州企業の参入機会が増えるほか、原油をはじめとする豊富な資源にアクセスしやすくなり、ロシアへのエネルギー依存を減らすことができる。こうした両者の思惑が一致し、双方は関係強化に向けて既存の協定を深化させるため、近く交渉を開始することで政治合意した。年内にも交渉がスタートする可能性がある。

メキシコのペニャ・ニエト大統領は会議後の会見で、メキシコとEUは「世界経済の実態に即して相互の関係性を見直す必要がある」と指摘。メキシコにとって最も重要なパートナーである米国およびカナダとEUの高度な貿易協定に触れ、発効から15年が経過したFTAを「EUの経済力」と「メキシコの成長性」を反映した新たな協定に進化させなければならないと強調した。