仏政府は9日、中小企業を対象とする雇用促進策を発表した。失業率が10%を上回る水準で推移するなか、労働規制を緩和して企業が新たな人材を確保しやすい環境を整え、欧州委員会や経済協力開発機構(OECD)が求める労働市場の改革を推進する。
バルス首相が打ち出した「雇用促進法(Jobs Act)」と呼ばれる施策の目玉は、有期労働契約に関する規定の変更。現行ルールによると、有期労働の契約期間は原則として最長18カ月で、その間に認められる契約更新は1回のみとなっている。これに対し、新ルール導入後は全体の契約期間が法定の18カ月以内であれば、2回まで契約更新が可能になる。
一方、裁判で不当解雇が認定された場合、企業が支払わなければならない賠償金の額に上限が設けられる。現行ルールは事業規模や従業員の勤務年数などに応じて不当解雇にかかる賠償金の額を定めているが、新たに上限を設けることで、中小企業が労働争議のリスクを恐れず積極的に採用に踏み切れるようにする。
また、従業員50人以下の企業を対象とする税金や社会保険料の事業者負担の軽減措置について、従業員数が閾値(11人、20人、50人)を超えてから3年間は引き続きその時点での軽減率を適用し、中小企業の負担増を抑えることも決めた。
さらに、国内で120万に上る零細企業が今後1年以内に初めて従業員を採用する際、4,000ユーロの奨励金を支給する支援策も導入される。政府は同措置により、およそ6万人の雇用が創出されるとの見方を示している。
新たな雇用促進策に対し、フランス最大の経営者団体MEDEFの幹部は「いくつかの施策に当団体の要求が反映されており、全体として正しい方向に進んでいる」と一連の措置を評価している。一方、社会科学高等研究院(EHESS)のアラン・トラノワ教授は「政府は安定した長期の雇用契約の代わりに、融通の利く短期契約を奨励しているようにみえる」と指摘。長期の雇用契約を妨げる最大の要因になっている解雇規制の問題はなんら解決されていないと批判している。