欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/22

EU情報

クローン動物の子孫由来食品も輸入禁止に、欧州議会専門委が修正法案を承認

この記事の要約

欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会と農業委員会は17日、クローン動物およびクローン動物由来食品の生産・流通に関する指令案の修正案を賛成多数で承認した。欧州委員会はクローン技術で生まれた牛、羊、ヤギなどから生産された […]

欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会と農業委員会は17日、クローン動物およびクローン動物由来食品の生産・流通に関する指令案の修正案を賛成多数で承認した。欧州委員会はクローン技術で生まれた牛、羊、ヤギなどから生産されたミルクや肉の域内への輸入禁止を提案しているのに対し、修正案はクローン動物の子孫から生産された食品についても輸入・販売を禁止するという内容。法案は9月上旬の欧州議会本会議で採択される見通しだが、加盟国は新たな通商紛争の火種になりかねないとして厳格な規制の導入に反対する可能性が高く、法制化に向けた協議は難航が予想される。

クローン動物とその由来食品に関する規制は、「新規食品に関する規則」の改正に向けた議論のなかでクローズアップされた。同規則は新たな手法や技術によって生産された食品の安全な流通を目的として、1997年に制定されたもの。欧州委は遺伝子組み換え、クローン、ナノテクなどの技術革新を背景に、高い水準の安全性を確保しながら消費者に新たな選択肢を提供するため、2008年1月に認可手続きの一元化などを柱とする新規食品規則の改正案を打ち出した。

欧州議会は消費者保護の立場から、クローン動物だけでなく、その子孫から生産された食品についてもトレーサビリティが確立されない限り、域内での流通を認めるべきではないと主張したのに対し、加盟国は第3国から輸入された食品がクローン動物の子孫に由来するものかどうかチェックする有効な手段はなく、米国などとの貿易摩擦を招きかねないと反論。最終的に改正案は廃案となったため、欧州委はクローン動物に関する規制を切り離し、13年12月に「新規食品に関する規則案」と「クローン動物由来食品に関する指令案」を提出し、欧州議会と閣僚理事会で審議が続いている。

修正案によると、クローン技術で生まれた動物とその由来食品に加え、クローン動物の生殖材料(胚や精液)とクローン動物の子孫に由来する食品も域内への輸入が禁止される。また、域外の多くの国で家畜にクローン技術が施されている現状を踏まえ、第3国から家畜を輸入する際は、クローン技術で生まれた家畜やその子孫でないことを示す証明書の添付が義務付けられる。さらに、修正案はクローン動物とその由来食品に関する「指令」を、加盟国による国内法への置き換えを必要としない「規則」に格上げすることを提案している。