欧州司法裁判所は16日、欧州中央銀行(ECB)が2012年にユーロ圏の信用不安対策として打ち出した国債買い入れの妥当性をめぐる訴訟で、同措置を合法とする判決を下した。これよってECBが今年に開始した大規模な量的金融緩和も“お墨付き”を得た格好となる。
問題となっていたのは、「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」と呼ばれる国債買い入れ措置。欧州裁は「ECBに与えられた権限に基づく金融政策の枠内にあるプログラムだ」として、原告側の主張を退け、合法と認定した。
ECBは2010年5月から、ギリシャの信用不安で動揺したユーロ圏の金融市場を支えるため、重債務国の国債を流通市場で買い取る「証券市場プログラム(SMP)」と呼ばれる異例の措置を開始。さらに信用不安がイタリア、スペインに飛び火したことを受けて、12年9月に同措置の拡大版となるOMTの実施を発表した。期間1~3年の国債を利回りが適正水準に下がるまで流通市場で無制限で買い取るというものだ。
OMTは計画を発表しただけで金融安全弁として機能し、信用不安が沈静化したため、実際には行われなかった。しかし、ドイツの政治家からがECBによる国債の無制限購入は重債務国の放漫財政を助長するもので、EU基本条約に定められたECBの権限を逸脱するとして反発し、ドイツの連邦憲法裁判所に提訴。憲法裁は14年2月、欧州裁に同案件を付託していた。
同問題をめぐっては、ECBが3月に開始した総額1兆1,000億ユーロ規模の量的緩和にも関連することから、大きな注目を集めていた。欧州裁は1月に合法とする法務官見解を示しており、今回の判決は予想通り。量的緩和にはドイツが批判的だが、これで法的問題が持ち出される可能性はなくなったと受け止められている。