欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/17

西欧

独自動車3社、ノキアの地図部門を買収

この記事の要約

独高級車メーカーのダイムラーとBMW、フォルクスワーゲン傘下のアウディは3日、通信機器大手ノキア(フィンランド)のデジタル地図・位置情報サービス部門「ヒア(HERE)」を共同買収することで合意したと発表した。自動運転車の […]

独高級車メーカーのダイムラーとBMW、フォルクスワーゲン傘下のアウディは3日、通信機器大手ノキア(フィンランド)のデジタル地図・位置情報サービス部門「ヒア(HERE)」を共同買収することで合意したと発表した。自動運転車の実用化や車両の情報端末化(コネクテッドカー)に伴う次世代サービスに欠かせないデジタル地図の技術を確保し、ビッグデータの分野で圧倒的な強みを持つグーグルなどの米IT大手に主導権を奪われないようにするのが狙い。ヒアの買収手続きは独禁当局の審査を経て来年第1四半期に終了する見通しだ。

独3社はヒアを28億ユーロで完全買収する。出資比率はそれぞれ3分の1とし、特定の企業の影響力が強くならないようにする。

3社はまた、ヒアの事業に直接介入することも回避する考えだ。これによりヒアの中立性を保ち、3社以外の自動車メーカーや部品メーカー、その他の企業が引き続きヒアの顧客にとどまることができるようにする。

デジタル地図は自動車業界の今後の競争でカギを握る技術。それにもかかわらず、高級車市場で首位争いを繰り広げる3社がヒアを共同買収したうえ、競合メーカーにもヒアの製品・サービスを引き続き提供するのはいくつかの狙いがあるためだ。

まずは、新たなメーカーをヒアの共同出資者として招き入れれば、1社当たりの開発コストを圧縮できるという事情がある。自動運転を可能にする次世代デジタル地図はナビゲーションを主目的とする従来の地図よりも性能が大幅に高くなければならない。具体的には、従来のデジタル地図がメートル単位の精度で十分だったのに対し、自動運転用のものは10センチ単位の精度が必要となる。また、一刻一刻と変化する道路交通情報を瞬時に反映させることも前提条件で、「地図作成の費用を特定の企業が単独でねん出することはできない」(自動車部品大手ボッシュの役員ロルフ・ブーランダー氏)。3社はヒア買収のコンソーシアムに加わるよう米ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードにも呼びかけたという。市場調査会社IHSのアナリストは、同コンソーシアムに競合企業が今後、加わると予想している。