欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/5

西欧

シェル、北極海での油田探査中止

この記事の要約

欧州石油大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは9月28日、米アラスカ州沖の北極海で進めていた油田探査を中止すると発表した。試掘の結果、採算に見合う埋蔵量が確認できなかったため。原油安で経営環境が悪化する中、巨額の資金を投じ […]

欧州石油大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは9月28日、米アラスカ州沖の北極海で進めていた油田探査を中止すると発表した。試掘の結果、採算に見合う埋蔵量が確認できなかったため。原油安で経営環境が悪化する中、巨額の資金を投じた同プロジェクトの放棄は大きな打撃となる。

北極圏の原油埋蔵量は全世界の約2割に上るとされる。シェルは2007年、アラスカ西岸沖のチュクチ海で石油・ガス田を開発するプロジェクトに着手。今年に米政府から認可を受け、7月から試掘を行っていた。

同事業をめぐっては、厳しい環境下での油田開発に大きなリスクとコストがかさむとして株主が難色を示していたほか、対象地域にホッキョクグマなど貴重な野生生物が多く生息していることから環境保護団体が反対し、米政府も厳しい規制を適用したため開発コストが一段と膨らむのは避けられない情勢だった。シェルは試掘で十分な埋蔵量を確認できなかったことから見切りをつけ、探査中止を決めた。同社は声明で、北極海での油田開発を「近い将来」に再開する予定はないと言明した。

すでにシェルは同事業に約70億ドルを投じた。これが無駄になったほか、事業撤退に最大41億ドルのコストがかかる見込みで、経営に大きなしわ寄せが及ぶことになる。

一方、シェルは30日、ドイツの電力・天然ガス市場に参入すると発表した。ドイツは欧州最大の市場規模を持つ一方で、都市エネルギー公社などの小規模な事業者がひしめいていることから、事業を拡大しやすいと判断した。英国の独立系エネルギー事業者ファースト・ユーティリティと共同で事業を展開していく。