EUは8日に開いた内相理事会で、中東などから押し寄せる難民問題について協議し、難民の認定要件を満たさない不法移民については本国への送還を徹底することなどで合意した。9月の理事会で紛争が続くシリアなどからの難民合わせて16万人を加盟国が分担して受け入れる計画を承認したことを受け、国境警備を強化してバルカン半島諸国などから経済的な理由で欧州を目指す不法移民の流入を抑制する。
EUはハンガリーなど東欧諸国の反対を押し切って加盟国による難民の受け入れ分担を決めたが、今年だけで域内に流入する難民や移民は100万人を超えるとされ、各国から対応には限界があるとの声が上がっている。欧州委員会によると、EUで難民申請したものの、要件を満たさず却下された人のうち本国に送還される割合は40%程度で、流入者の多くが不法移民として域内にとどまっている。EU議長国ルクセンブルクのアッセルボルン外相は理事会後の記者会見で、難民の受け入れ分担を実現するには不法滞在者の域外送還を強化する必要があると強調した。
理事会の合意文書は、不法移民に対しては「強制送還を含むあらゆる措置」を講じる必要があると明記。送還前の逃亡を防ぐため、状況に応じて「身柄を拘束するなどの厳しい対応」も辞さない構えを示している。具体的には難民や移民が殺到するギリシャやイタリアに難民管理センターを設置し、専門官が難民申請者の登録手続きなどを集中的に処理する一方、難民認定の要件を満たさない経済移民などに関しては、同センターが送還の手続きを行う。ただ、域外への送還は不法移民の出身国との連携が不可欠。このため理事会は欧州委に対し、半年以内に出身国から協力を得るための具体策をまとめるよう求めた。
一方、欧州委は6日、シリアなどから欧州に向かう難民らの経由地となっているトルコに対し、最大10億ユーロを支援する計画を発表した。前日にユンケル欧州委員長とトルコのエルドアン大統領がブリュッセルで会談し、基本合意したもの。トルコはEUの支援を受け、国内6カ所に合わせて200万人を収容できる難民受け入れ施設を設置するほか、沿岸警備を拡充する。一方、EUは欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)の担当者をトルコに派遣し、密航業者の取り締まりを強化する。