欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/12/7

EU情報

欧州委が目論見書の規制緩和提案、中小企業の資金調達支援で

この記事の要約

欧州委員会は11月30日、EUの企業が有価証券を発行する際に投資家に提示する目論見書に関する規制の緩和を提案した。域内資本市場の活性化によって企業が資金調達しやすい環境を整える「資本市場同盟」構想の一環となるもので、中小 […]

欧州委員会は11月30日、EUの企業が有価証券を発行する際に投資家に提示する目論見書に関する規制の緩和を提案した。域内資本市場の活性化によって企業が資金調達しやすい環境を整える「資本市場同盟」構想の一環となるもので、中小企業などを対象に緩やかなルールを適用し、株式、社債発行による資金調達を後押しする。

EUでは2005年に発効した「目論見書指令」に基づき、EU内の企業が域内で株式、社債を発行する際に投資家に提示する目論見書の共通ルールが定められている。これによって、ある加盟国の当局から承認された目論見書はEU全域で有効となり、企業は国境を超えた資金調達がしやすくなる。

欧州委が提案した規制緩和は、要件の緩和や手続きの簡素化によって、目論見書作成のコストや手間を削減するのが狙い。中小企業支援策として、株式・社債の発行規模が10万ユーロ以下の場合は目論見書を不要とするルールを改正し、この上限を50万ユーロに引き上げる。加盟国が企業による国内での資金調達を対象に、独自の判断で設定できる同上限についても、500万ユーロから1,000万ユーロに引き上げる。

また、現在は時価総額が100万ユーロを下回る企業に対して、通常より簡略的な目論見書が認められているが、これを同2億ユーロの企業にも適用する。このほか提案には◇上場企業による株式・社債の発行に関しては、新たに簡略的な目論見書を導入する◇頻繁に株式・社債を発行する企業は、“ユニバーサル・レジストレーション・ドキュメント(URD)”と呼ばれる年次の企業情報開示文書を定期的に更新することを条件に、新たな発行が申請から5日以内に認可されるようにする◇投資家の便宜向上のため、欧州証券監督機構(ESMA)がEU内で認可されたすべての目論見書を開示するウェブサイトを開設する――なども盛り込まれた。

欧州委のヒル委員(金融安定・金融サービス担当)は「投資家に必要な情報を提供する一方で、企業に不必要なコストが生じ、市場での資金調達を避けるようなことのない目論見書の制度が必要だ」として、今回の提案は「より良いバランスをとるものだ」と述べた。

このルール改正はEU加盟国と欧州議会の承認が必要となる。