欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/2/20

EU情報

ユーロ圏の17年成長率、1.6%に上方修正=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は13日発表した冬季の経済予測で、ユーロ圏の2017年の域内総生産(GDP)実質伸び率を1.6%とし、前回(11月)の1.5%から0.1ポイント上方修正した。前年の1.7%をわずかに下回るものの、緩やかな景気回 […]

欧州委員会は13日発表した冬季の経済予測で、ユーロ圏の2017年の域内総生産(GDP)実質伸び率を1.6%とし、前回(11月)の1.5%から0.1ポイント上方修正した。前年の1.7%をわずかに下回るものの、緩やかな景気回復が続くと予想した。ただ、英国のEU離脱問題、米トランプ政権の政策など不透明感な要素が多いと指摘。景気の下振れリスクが大きいと警告した。(表参照)

18年の予想成長率は1.8%。こちらも前回から0.1ポイント引き上げた。EU28カ国の予想成長率は17年、18年とも16年の1.9%を下回る1.8%。17年は0.2ポイントの上方修正、18年は据え置きとなる。

欧州委は16年下期の成長率が予想を上回ったことなどから、予測値を引き上げた。17、18年ともEUの全加盟国がプラス成長を記録すると予想している。すべての国がプラス成長となるのは、リーマンショックで揺れた08年以降で初となる。

しかし、欧州委は不安材料として、3月末にも開始される英国のEU離脱交渉、今年にEU主要国のドイツ、フランス、オランダで相次いで実施される国政選挙の行方、米トランプ政権の経済政策の3つを挙げ、「今回の予測を取り巻くリスクは例外的に大きい」と懸念を表明。景気が上振れする可能性もあるものの、「全体的なバランスは下振れに傾いている」と指摘した。

特に警戒しているのは、トランプ政権の主要分野での政策。欧州委は短期的には財政刺激策がプラスに作用し、欧州の景気を押し上げる可能性があるとしながらも、保護主義に舵を切れば、中期的に国際貿易に打撃を与えると警鐘を鳴らした。

EU主要国の17年の予想成長率はドイツが1.6%、フランスが1.4%、イタリアが0.9%、スペインが2.3%、英国が1.5%。英国に関しては、前回の1%から引き上げたものの、EU離脱問題をめぐる不透明感が広がることで企業の投資が落ち込み、個人消費の伸びも鈍化するとして、16年の2%を大きく下回る成長にとどまると指摘した。18年は1.2%まで縮小すると予想している。

債務危機が続くギリシャについは、景気回復が急速に進むと予想しており、16年に0.3%だった成長率は17年に2.7%、18年に3.1%まで拡大するとの見通しを示した。これに伴って財政が改善し、18年に黒字化すると予想。基礎的財政収支も18年にはGDP比3.7%の黒字となり、EUが金融支援の条件として求めている財政再建計画で目標値となっている同3.5%を達成できると見込んでいる。

一方、消費者物価に関しては、低迷していた原油価格の上昇を受けて値上げ圧力が強まり、16年に0.2%だったユーロ圏のインフレ率は17年に1.7%まで上昇すると予想している。