欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/14

EUその他

建物エネルギー性能指令、国内法整備の遅れでポーランドとオーストリアを提訴

この記事の要約

欧州委員会は10日、建物のエネルギー性能に関する指令の実施に必要な国内法の改正を怠ったとして、ポーランドとオーストリアを欧州司法裁判所に提訴したと発表した。欧州裁がEU法の履行義務違反と認定した場合、両国は制裁金の支払い […]

欧州委員会は10日、建物のエネルギー性能に関する指令の実施に必要な国内法の改正を怠ったとして、ポーランドとオーストリアを欧州司法裁判所に提訴したと発表した。欧州裁がEU法の履行義務違反と認定した場合、両国は制裁金の支払いを命じられることになる。

欧州委員会によると、冷暖房や給湯、照明をはじめとする建築物のエネルギー消費量はEU域内における総消費量の約40%を占め、二酸化炭素(CO2)の総排出量に占める割合も36%に上る。EUは省エネ対策の一環として、2002年に建築物のエネルギー使用量を大幅に削減することを目的としたエネルギー性能指令を制定した。しかし、20年までに域内全体でエネルギー効率を20%向上させるという目標の達成に向けて、10年5月に新規建造物のエネルギー消費量をほぼゼロにする「ゼロ・エネルギー」目標などを盛り込んだ新指令が導入され、加盟国は12年7月9日までに国内法を整備することが義務付けられていた。

ゼロ・エネルギー目標は、建物本体や関連設備の省エネ性能向上や再生可能エネルギーの利用などを通じ、化石燃料によるエネルギー消費を正味でゼロに近づけて、CO2排出量を大幅に削減するための新たなアプローチ。達成期限は一般の新築建物が20年末、公的な建物は18年末となっており、加盟国はそれぞれの実情に合わせてゼロ・エネルギー建物を普及させるための具体策(たとえば補助金や低利融資、技術面のサポートなどの奨励策)を盛り込んだ行動計画の策定が義務付けられている。新指令にはこのほか、新築および売買または賃貸される建物がエネルギー効率の基準を満たしていることを証明するためのEU共通の認定制度の導入、空調システムの定期的な検査および報告義務などが盛り込まれている。

欧州委はポーランドとオーストリアに対し、新指令に沿った国内法の制定が遅れているとして13年6月と9月にそれぞれ2回目の警告にあたる理由付き意見書を送付したが、いまだに法制化の作業が完了していないため、法的手続きに踏み切った。欧州裁が欧州委の主張を支持した場合、判決が出た日から国内法の策定作業が完了するまでの期間、ポーランドは1日につき9万6,720ユーロ、オーストリアは同3万9,593ユーロの支払いを命じられる。

なお、欧州委は今年4月、今回と同様の理由でフィンランドとベルギーをEU司法裁に提訴。さらにイタリア、オランダ、ルクセンブルク、チェコ、スロべニアを対象に、法制化の進捗状況について調査を進めている。