欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/3/2

EU情報

欧州で新型コロナの感染拡大、休校やイベント中止相次ぐ

この記事の要約

イタリア政府は1日、11の自治体の封鎖措置を当面継続するほか、北部3州や感染が確認された地域で実施している休校措置を少なくとも8日まで延長すると発表した。

一方、フランス政府は1日、感染が確認されたパリ郊外の自治体などで学校を休校にすると発表した。

ドイツでは西部や南部を中心に感染者が増加しており、1日までに117人の感染が確認されている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、EUと加盟国が対策を強化している。欧州では1日までに、イタリアで感染者が1,694人、死者が34人となったほか、フランスでも130人の感染と2人の死亡を確認。ドイツやスペインでも感染が広がっており、これまでに感染が確認された国は20カ国以上に上る。

欧州委員会は2月24日、世界レベルの感染拡大を阻止するには国際間の連携が不可欠との認識に立ち、世界各地における医療体制の整備・拡充などに総額2億3,200万ユーロ(約280億円)を投じる計画を発表した。保険医療システムが脆弱な途上国などへの支援策として、世界保健機関(WHO)を通じて1億1,400万ユーロを拠出するほか、診断・治療技術の研究支援として1億ユーロを投じる。さらにアフリカ向けの支援と、中国に滞在しているEU市民の帰国支援として、それぞれ1,500万ユーロ、300万ユーロを拠出する。

一方、欧州委のレナルチッチ委員(棄権管理担当)は同日の記者会見で、域内の移動制限は現時点で検討していないと説明した。イタリアと周辺国のフランスやオーストリアなどが25日に開いた保健担当相による緊急会議でも、国境の閉鎖は「適切ではない」との認識で一致。そのうえで、感染の拡大防止に向けた情報の共有などで連携を強化する方針を確認した。

欧州では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて経済活動が鈍り始めており、財政政策による下支えを求める声が出ている。ユーロ圏財務相会合のセンテーノ議長(ポルトガル財務相)は28日、新型コロナウイルスによるユーロ圏経済への影響を分析し、対応を協議するため、3月4日にユーロ圏以外の加盟国も含めた各国財務相による電話会議を行う方針を明らかにした。センテーノ氏は「新型コロナウイルスはユーロ圏経済にとって明らかな下方リスクだ」と述べ、各国が連携して対応する必要性を訴えた。

◇加盟国の対応

こうした中、イタリア保健省は29日、国内の感染者が1,000人を超えたと発表した。感染者数が1,000人を超えたのは中国、韓国に続いて3カ国目。死者数も中国、イランに次いで3番目に多くなっている。

感染が広がっている北部のロンバルディア州とベネト州では、24日から11の自治体を封鎖すると共に、すべての学校を休校としている。イタリア政府は1日、11の自治体の封鎖措置を当面継続するほか、北部3州や感染が確認された地域で実施している休校措置を少なくとも8日まで延長すると発表した。このほかロンバルディア州では映画館や博物館を閉鎖するほか、ミラノの名門歌劇場「スカラ座」も公演を中止している。

一方、フランス政府は1日、感染が確認されたパリ郊外の自治体などで学校を休校にすると発表した。また、全土で5,000人を超えるイベントの開催を禁止したほか、ルーブル美術館も1日は終日休館した。

さらにドイツでも28日、ベルリンで3月4~8日に開催予定だった世界最大級の旅行見本市「ITBベルリン」の中止が発表された。ドイツでは西部や南部を中心に感染者が増加しており、1日までに117人の感染が確認されている。