欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/5/11

EU情報

ユーロ圏は20年に7.7%のマイナス成長、欧州委が予想を大幅下方修正

この記事の要約

欧州委員会は6日に発表した春季経済予測で、ユーロ圏の2020年の域内総生産(GDP)が実質7.7%減になるとの見通しを示した。

ユーロ圏の予想成長率は、国際通貨基金(IMF)が4月中旬に発表した最新の世界経済見通しで示したマイナス7.5%とほぼ同水準。

さらに、各国が新型コロナ危機に巨額の財政出動で対応していることから、ユーロ圏の20年の財政赤字はGDP比8.5%と、前年の同0.6%から大きく膨らむと予測している。

欧州委員会は6日に発表した春季経済予測で、ユーロ圏の2020年の域内総生産(GDP)が実質7.7%減になるとの見通しを示した。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞しているためで、前回(2月)の1.2%増から大幅に下方修正した。(表参照)

ユーロ圏の予想成長率は、国際通貨基金(IMF)が4月中旬に発表した最新の世界経済見通しで示したマイナス7.5%とほぼ同水準。EU27カ国ベースの予想成長率はマイナス7.4%で、すべての国がマイナスとなる。主要国の下げ幅は、新型コロナの影響がとくに深刻なイタリアが9.5%、スペインが9.4%、フランスが8.2%、ドイツが6.5%。

欧州委はロックダウンと称される外出、店舗営業制限などが5月以降に徐々に解除されるという想定に基づき、今回の予想をまとめた。21年はユーロ圏で6.3%、EUで6.1%のプラス成長に転じるとみている。

ただ、ジェンティローニ委員(経済担当)は、「欧州経済は(1929~32年の)世界大恐慌以来、未曽有の経済ショックに見舞われている」とした上で、景気動向は「ロックダウン解除のスピードに左右される」と指摘。制限措置が長引けば、景気が一段と落ち込むとして、強い警戒感を示した。

ユーロ圏では新型コロナ危機で雇用も大きな打撃を受けており、欧州委は20年の失業率が前年を2.1ポイント上回る9.6%に悪化すると予想。物価も需要の減退、原油価格の急落に伴って下落圧力が強まり、インフレ率は0.2%にとどまるとの見通しを示した。前回予測の1.3%から大きく引き下げた。

さらに、各国が新型コロナ危機に巨額の財政出動で対応していることから、ユーロ圏の20年の財政赤字はGDP比8.5%と、前年の同0.6%から大きく膨らむと予測している。とくにイタリアは新型コロナウイルス感染拡大の前から財政が悪化していたこともあり、域内最悪のGDP比11.1%まで拡大する見込みだ。