欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/7/26

EU情報

ECBが金融政策の指針変更、超低金利長期化へ

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は22日に開いた定例政策理事会で、金融政策の方向性を示す指針「フォワードガイダンス」を変更し、景気を下支えするため大規模な緩和策を継続する方針を打ち出した。金融政策の戦略を先ごろ見直し、インフレ率の […]

欧州中央銀行(ECB)は22日に開いた定例政策理事会で、金融政策の方向性を示す指針「フォワードガイダンス」を変更し、景気を下支えするため大規模な緩和策を継続する方針を打ち出した。金融政策の戦略を先ごろ見直し、インフレ率の目標を従来の「2%未満でそれに近い水準」から「2%」に修正したのを受けたもの。同目標に達するまで超低金利政策を続ける。

ユーロ圏のインフレ率は、コロナ禍による個人消費停滞などの影響で、20年12月まで5カ月連続でマイナスとなっていたが、低迷していた原油価格の上昇やドイツの付加価値税(VAT)減税が12月に終了するなど一時的要因で1月からプラスに転じ、6月は前年同月比1.9%まで持ち直した。物価の番人であるECBは、本来なら金融政策の正常化または引き締めを検討する時期にさしかっている。

ECBは物価の一時的な上振れを容認することで、金融緩和策を長期的かつ柔軟に継続できるようにするため、8日に金融政策の戦略見直しを発表していた。

これまでの金利に関する指針では、インフレ率が目標水準に達する見通しが立つまで超低金利政策を続けることになっていた。今回の理事会では、新たな目標水準である2%に達し、さらに当面は同水準を維持すると判断するまで、現行水準かそれ以下にとどめるとする方針を示した。インフレ率が一時的に目標を超えることを容認することも確認した。

このほかECBは、国債、社債などの資産を買い入れる「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」など大規模な量的金融緩和策を必要と判断する時期まで継続する方針も打ち出した。

今回の決定は、景気の下支えを優先する姿勢を鮮明に示すものだ。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏の景気回復が「軌道に乗っている」としながらも、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大で下振れリスクがあることや、金融政策で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)が低水準にとどまっていることに言及し、金融緩和継続の必要性を強調した。