欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/2/14

EU情報

半導体安定供給確保に向けた法案発表、域内での開発・生産を推進

この記事の要約

欧州委員会は8日、EU域内における半導体の研究・開発や生産を推進するための「欧州半導体法案」を発表した。2030年までに官民で430億ユーロ(約5兆6,600億円)を投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押しするほか、有力メ […]

欧州委員会は8日、EU域内における半導体の研究・開発や生産を推進するための「欧州半導体法案」を発表した。2030年までに官民で430億ユーロ(約5兆6,600億円)を投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押しするほか、有力メーカーの誘致にも力を入れ、東アジアなど域外への依存度を下げて安定供給を確保する。

EUは世界での半導体生産シェアを現在の約10%から30年に20%以上に引き上げる目標を掲げている。世界的な半導体の供給不足や、域内供給の多くを東アジアからの輸入に依存している現状を踏まえ、域外への依存度を下げて供給体制を強化するとともに、半導体分野で欧州が競争力を高めることが新法の狙い。今後、欧州議会と閣僚理事会で法案について協議する。

法案によると、まずEUと加盟国が共同で「半導体のための欧州イニシアチブ」を立ち上げ、110億ユーロの基金を用意して次世代半導体の開発プラットフォームや生産設備を強化する。

また、半導体の安定供給に向けた支援の枠組みとして、革新的でエネルギー効率の高い半導体の生産施設に対し、計画から稼働に至る各段階で加盟国による迅速な審査などの優遇措置を受けられるようにする。EUは原則として民間企業への補助金を禁止しているが、例外的に加盟国も補助金を交付できるようにする。

さらに安定供給に向けた危機対応として、加盟国と欧州委員会の間で「調整メカニズム」を構築し、サプライチェーンを監視して需要と供給を予測。深刻な供給不足に陥った際は事業者に増産やEU域内への供給を優先するよう命じたり、欧州委が加盟国を代表して共同調達できる仕組みを導入する。

欧州委のベステアー執行副委員長(競争政策担当)は記者会見で、製造拠点の誘致に向けて台湾積体電路製造(TSMC)との間で協議が進んでいることを明らかにした。米企業とも協議を行っているといい、欧米メディアはインテルが欧州での新工場建設に意欲を示していると報じている。